Bismarck編
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元を隠したまま、真っ赤な顔でこちらを睨み続ける……と思ったが、急にそのとげとげしい雰囲気がふっと消えた。目元が緩んで、同じ上目遣いなのだが、ずいぶんと印象が変わった。
「……ったのよ」
「は?」
「誰が嫌っていったのよ!」
「は、はあ?」
「ほら、わ、私が頭をなでさせてあげるって言ってるのよ。も、もっと褒めてよ……」
さすがに、ビスマルクをあおっていた俺も、これは予想外だった。
帽子を握りしめ、頭を差し出すように顔を近づける。なんというか、先ほどの可愛いビスマルクが、さらに練度を上げて戻ってきた。
潤んだ目で俺の顔を見つめるビスマルク。はあっ、とため息が一つ漏れる。
「はいはい、よく頑張ったな、ビスマルク。頼りにしているぞ」
先ほどと同じように、頭にポンと手を置いて、軽く撫でてやる。こいつ、気持ちよさそうにしやがって。しかし、なんかあれだな。何かに似ていると思ったが、子供のころに飼っていた猫にそっくりだ。触ろうとすると邪険にするくせに、その後で撫でてくれとばかりにすり寄ってくる。
「ふふーん、もっと私に頼ってもいいのよ?」
「はいはい。頼りにしてるぞ。ドイツ艦隊旗艦様」
どっかの背伸び駆逐艦のようなセリフを宣うドイツ最強の戦艦様の頭を、俺はしばらく撫で続ける羽目となった。
※※※※
「なるほど、あれが、オイゲンの言うところの『ツン・デーレ』というやつなのか」
「なんかあそこまで行くと、「ツン」がどっか行っちゃってますけどね。『デレ・デーレ』です。まあ、どちらにしても、ビスマルクお姉さまの魅力を高める『ゾクセイ』であることに違いはないです」
「どちらにしろ、あんなビスマルクは見たことがないよ」
「ビスマルク、部屋のオスカーみたいです……」
「……ねえ、これ、わたしたちが見ててもいいの?」
「……そうだな。マックスの言う通りだ。見つからないうちに退散するか。ほら、行くぞ、オイゲン」
執務室の戸の隙間から、顔を放すと、グラーフはオイゲンの襟首を捕まえた。
「え〜、もうちょっと見ていたいです〜」
「問答無用だ。行くぞ」
ひそひそと争う声が、提督の執務室の前から遠ざかっていった。
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