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戦国異伝供書
第五十八話 出家その六

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「よいな、この城必ず守るぞ」
「長尾殿の大軍が来られても」
「それでもですな」
「ここは守りますな」
「何としても」
「そうするのじゃ」
 高坂はここで城を枕に討ち死にするかも知れないと思った、だがそれでも何があろうとも生きようと考えていた。城の兵達と共に。そのうえで城の守りを固めたうえで狼煙を上げさせた。
 狼煙はすぐに信玄の下にも伝わった、彼は狼煙の話を聞くとすぐに言った。
「ではじゃ」
「はい、それではですな」
「これよりですな」
「出陣して」
「そしてですな」
「決着をつける」
 謙信、彼とというのだ。
「既にあの御仁も出家しておるそうじゃな」
「はい、長尾殿もです」
 山本が信玄に答えた。
「既にです」
「そうじゃな、そしてその入道の名は」
「謙信というそうです」
「よい名じゃな」 
 その名を聞いてだ、信玄は微笑んで応えた。
「あの御仁に相応しい」
「そう言われますか」
「うむ、ではその長尾殿とじゃ」
「これよりですな」
「決着を着ける、その為にな」
 まさにというのだ。
「出陣するぞ」
「わかり申した」
「他の者達もよいな」
 ここでこうも言った信玄だった。
「出陣するぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「我等も出陣します」
「兵を率いて」
 武田の主な家臣達も皆応えた、そうしてだった。
 信玄は武田の主な将帥達を皆連れて出陣した、率いる兵達も主力であった。それが北に進むにつれて増えていき。
 信濃の千曲川に来た時には二万になっていた、彼はその二万の軍勢を見て甘利に言った。
「長尾殿の軍勢も二万じゃな」
「双方その軍勢はです」
「互角じゃな」
「お互い主力を持ってきましたな」
「うむ、そしてじゃ」
 さらに言うのだった。
「長尾家の主な将帥もじゃな」
「二十五将が全員だとか」
「こちらも源助も加わればな」
 高坂、彼がというのだ。
「それでじゃ」
「二十四将がですな」
「揃う、やはりここはな」
「武田家と長尾家の」
「決戦じゃ」
 その時だというのだ。
「まさにな」
「当家は赤」
 飯富が武田家の色から話した。
「そして長尾家は黒」
「赤と黒となるとな」
「火と水ですな」
「うむ、まさにじゃ」
 信玄もその通りだと答えた。
「我等は相反する、しかし火も水もじゃ」
「世には必要ですな」
「そうじゃ、この世は五つのもので出来ておるな」
「火と水、それに」 
 飯富はさらに話した。
「木、土、金ですな」
「その五つじゃ、当家はそのうちの火じゃな」
「奇しくもそうなっていますな」
「昔から当家では服や具足、旗をその色にしておっただけだが」
 赤、この色にだ。
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