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戦国異伝供書
第五十八話 出家その一

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               第五十八話  出家
 晴信は出家した、その入道の名は信玄といった。彼は出家を終えてから家臣の者達に笑ってこんなことを言った。
「この通り頭がじゃ」
「剃られましたな」
「また見事に」
「そうされましたな」
「それでじゃ」
 そうなってというのだ。
「涼しくてよいぞ」
「左様ですか」
「髪の毛がなくなり」
「剃ってしまうと」
「そうなのですか」
「うむ、だからじゃ」
 それでというのだ。
「出家してよかったわ、むしろじゃ」
「むしろ?」
「むしろといいますと」
「何かありますか」
「わしが出家しようと思ってじゃ」
 それでというのだ。
「こうして出家したのも運命かとな」
「運命ですか、お館様の」
「そう思われますか」
「そうなのですか」
「そう思えてきた」
 こう家臣達に言うのだった。
「わしはな」
「そういえば」
 昌幸がここで信玄に言ってきた。
「長尾殿もです」
「出家されるとか」
「考えておられる様なので」
「そうか、ではな」
「この度のことか」
「わしが出家してな」
 そしてというのだ。
「長尾殿もじゃ、共に出家してじゃ」
「そのうえで」
「戦うのではないか」
 こう言うのだった。
「そうでないかとな」
「思われますか」
「うむ、これはたまたまではない」 
 出家しようと思い実際にそうしたことはというのだ。
「やはりな」
「運命ですか」
「長尾殿と共にな。では長尾殿もな」
「今越後で」
「出家されようと決意されたか」
 若しくはというのだ。
「既に出家されたか」
「どちらかでありますか」
「そうであろうな」
「やはりそうですか」
「そしてな」
 晴信はさらに話した。
「共に出家してじゃ」
「いよいよですか」
「未練も何かも捨てて」
 出家を機にしてというのだ。
「そのうえでな」
「決着をですか」
「つけようぞ」
 輝虎、彼とというのだ。
「そうする、しかしな」
「はい、やはりです」
 甘利が言ってきた。
「長尾殿はお強いので」
「そう簡単にはじゃ」
「勝てませぬな」
「うむ、しかしじゃ」
 それでもというのだ。
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