第三章
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ブロハードが最初ボール球を見送った、一球位ならと誰もが思った。しかしその二球目槇原は一四九キロのストレートを投げたが。
ブロハードのバットが一閃された、そしてだった。
打球は神宮球場の左中間スタンドに消えた、一瞬誰もがだった。
何が起こったかわからなかった、しかしだった。
ボールは確かにスタンドに消えた、それが何よりの証拠だった。
「おい、嘘だろ」
「ホームランか?」
「ここでホームランが出るか」
「あのブロハードが」
「しかも槇原から」
誰もが、ヤクルトファン達すら唖然となった。だがその次の瞬間。
神宮の一塁側が歓喜の声に包まれた、彼等はまさかのブロハードの逆転ツーランに喝采を浴びせた。
地味な助っ人がベースを回る、そしてマウンドでは槇原が蹲っていた。巨人ファンはその様子を見て呆然となった。
「こんなところで・・・・・・」
「こんなところで打たれるなんて」
「折角優勝だと思っていたら」
「それが・・・・・・」
打ち砕かれた、誰もが確信した。これでこの試合は決まったのは明らかだった。
後は荒木大輔が登板し意気消沈した巨人打線を封じた、試合が終わった直後土橋はブロハードに監督として大声で告げた。
「お客さん達に思いきりお辞儀して来い!」
「わかったよ、監督」
ブロハードは微笑んで土橋に応えた、そうしてだった。
お立ち台でファン達に笑顔で挨拶をした、ファン達はその彼に再び喝采を浴びせた。
「まさかな」
「こんなところで打ってくれるなんてな」
「思いも寄らなかったけれどな」
「よくやってくれたよ」
「全くだ」
彼等はブロハードを今は感謝の目で見ていた、地味な助っ人の思わぬ一打に。
巨人にとってこの敗戦は大きな痛手であった、広島は巨人が残り二試合、この試合も含めたそれを連勝していたら広島は残り五試合を全勝しなければならなかったのだ。だが一試合は負けられる様になった、ここに広島に心理的余裕が出来た。
そしてその余裕が勝利につながった、広島は勝ち続け遂に胴上げとなった、昭和六十一年の狂気は終わったのだ。
テレビで醜く顔の腫れ上がった男が広島の選手達が乗った飛行機が落ちて巨人が繰り上げ優勝するかも知れないとテレビで堂々と言ったがそれはある筈もなかった、かえってこの輩の品性と人格を公の電波で流しただけであっただろう。
巨人ファンの中に多くいる衆愚は怒り狂ったが敗北は敗北だ、この連中の狂気もっと言えば妄想に終わって日本そして世界に正義があることがここで証明された。
ブロハードは残留が決まったが翌年ある事情からヤクルトをシーズン開始早々退団し日本を去った、それから歳月が経ち彼を覚えている野球ファンは少なくなっただろう。
だがかつて衆愚達の妄想をそのホームランで打ち砕きこ
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