第二章
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「あの成績じゃな」
「期待外れだったからな」
「杉浦や若松もよくなかったにしても」
「他のバッターもな」
「それでも期待外れは事実だしな」
「今年でクビか」
「土橋さんも辞めるみたいだしな」
土橋正幸、監督である彼もというのだ。
「本当にいい話なかったな」
「今年もな」
「こりゃ来年も最下位か?」
「いい要素ないからな」
こんな話ばかりだった、この時から六年後の優勝なぞ誰も想像だにしていなかった。とかく当時のヤクルトは暗い状況だった。
その象徴の一つがブロハードで球場で彼を見てもだった。
「目立たないな」
「地味だよな」
「成績だけじゃなくてな」
「ぱっとしないな」
どうしてもそう見えた、ごく普通の白人の助っ人だった。
まさに期待外れで何時出て来ても期待出来ない、そんな助っ人で巨人ファンの多くもマークしていなかった。むしろだった。
当時の巨人は原が怪我でいなかったがクロマティが活躍しデッドボールも乗り越えて打ち続けていた。特にヤクルトに対して。
満塁ホームランを打つなぞ手がつけられなかった、それはこの十月七日の神宮での試合でも同じであった。
逆転ツーランを打った、ここでもうヤクルトファンはこう思った。
「今日も駄目か」
「結局打たれたな」
「本当にクロマティ凄いな」
「今年は波に乗ってるな」
「特に今はな」
「手がつけられないな」
ホームランを打ち会心の顔でベースを回る彼を見てぼやくばかりだった。
逆に巨人ファンのボルテージは上がっていた。
「やったぞ!」
「このままいけ!」
「今日も勝て!」
「このまま優勝だ!」
「今日勝ったらいけるぞ!」
彼等は優勝を確信した、今日勝てば間違いないとだ。
そして六回裏ヤクルトの攻撃となった。しかし試合の趨勢はもう決まったと誰もが思っていた。ヤクルトの打線は打たなかったからだ。
それでクリーンアップからの攻撃でも誰も期待していなかった。
「レオンが打てなかったら終わりだからな」
「もうな」
「どうせな」
「レオン以外打てるバッターいないからな」
ヤクルトファン達もこう思い込んでいた、それでだった。
レオンが四球で出てブロハードがバッターボックスに立ってもこう思うだけだった。
「三振か凡打だな」
「最悪ゲッツーで終わりだな」
「どうせ打つ筈がないだろ」
「今日の槇原調子がいいしな」
マウンドにいる巨人のピッチャー槇原和巳を見て言うのだった。
「速球は相変わらずだしな」
「今日はスライダーもフォークもいい」
「ならブロハードに打てるか」
「ブロハード変化球に弱いしな」
「速球に変化球混ぜて楽にアウト取るだろ」
「三振ならまだいいさ」
「ゲッツーになるかも知れないな」
ほぼ誰も期
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