第一章
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噂と真実の結末
この時マラッカのスルタンであるマンスール=シャーは首を傾げさせていた。
そしてだ、廷臣達に問うていた。
「それはまことであるな」
「我等も信じられませんが」
「まさかと思いますが」
「今街で噂になっています」
「ハントゥアが謀叛を企んでです」
「秘かにスルタンを弑逆する為に毒を含んだ刀を用意させたとか」
「それはもう持っていると」
廷臣達はスルタンに口々に話した。
「そしてです」
「今度スルタンの御前に参上した時にです」
「スルタンを弑逆するつもりだとか」
「そして自身がスルタンになるつもりとのことです」
「それは許せん、ならだ」
スルタンはその整い見事な顎鬚と口髭のある顔で述べた。
「すぐにハントゥアを捕らえてだ」
「そしてですね」
「そのうえで、ですね」
「あの者に直接聞きますか」
「そうされますか」
「そうする、余自らだ」
スルタン自身がというのだ。
「あの者から直接聞こう」
「ではこれよりですね」
「ハントゥアを捕らえますか」
「そしてそのうえで」
「スルタンご自身が」
「そうしよう、しかしだ」
ここでスルタンはこうも言った。
「あの者は忠義の者だ」
「はい、スルタンそしてこの国に対してです」
「これ以上はないまでの忠義を以て仕えています」
「ただ武勇に優れているのではありません」
「その忠義の心も見事です」
「これ以上はないまでに」
「そのハントゥアが余を殺してだ」
そうしてというのだ。
「そのうえで国を奪うとはな」
「信じられませんね」
「どうにも」
「だからですね」
「ここは」
「あの者から聞こう」
こう言ってだ、スルタンはハントゥアを捕らえる様に命じた。だがその話を聞いたハントゥアの友人であるバンダハラは。
たまたま彼が自分の家に遊びに来ていたのでだ、その話を聞いてすぐに彼に言った。
「おい、大変なことになったぞ」
「どうしたんだ?」
「お前がスルタンを弑逆し国を奪おうという話が出ていてだ」
たまたま酒を飲み肉を楽しんでいた友人に話した、浅黒い肌に逞しい顔をしていて目の光は星の様だ。背は普通位だが整った身体つきをしており動きには隙がない。短く刈っている黒髪が実に似合っている。
「スルタンがお前を捕らえようとしている」
「私がスルタンを弑逆し国を奪うだと」
その話にだ、ハントゥアは女と見まごうばかりに整った顔立ちの友人に述べた。
「馬鹿な」
「私もそう思う、お前がそんなことを考えるなぞな」
「一度もない、ではだ」
ハントゥアはすぐに席を立って言った。
「これよりスルタンの御前に参上してだ」
「そうしてか」
「身の潔白をお話しよう」
「あえて捕まるつもりか
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