第七話〜蒼〜
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は彼に興味を持った。一体どこの誰なのだろうかと。
それを兵士に聞いたが、彼らは命令違反をした上官のうわさが広がらないようにしようと、徹底して正体を明かすことを避けた。
しばらく後、彼女は呉の曲阿にある村に預けられ、やがて自分を救った部隊が孫堅軍のものであるということを知った。
それから二年と数月、孫呉の軍に憧れ、また恩人との再会を夢見て、彼女はひたすら武芸を磨いた。時には寝食を忘れ、月と陽が二度通過することもあった。
幸い女にはわずかながらにも武芸の才があったのか、修行を始めて二年でそこらの賊には負けないほどの力を手にし、孫呉への仕官のため、意気揚々と本拠地長沙へと向かった。
「その女が無事に恩人に会えたかは知らないが」
長い話を終え、蒼は一息つく。
隣の雪蓮はというと、要らぬことを聞いた自分を責めているのか、押し黙るのみ。
「……蒼、悪かっ」
「でも」
謝罪の言葉を述べようとする雪蓮。
しかしその言葉に被せて、蒼は再び口を開く。
「女はきっと後悔していないだろうさ。生き残ったことに。そして武芸を鍛え、孫呉へ仕官したことに」
「…そう」
明るい笑顔でそう言い切り、蒼は馬を雪蓮の先へと進めていく。
悲しみを背負う強さ、そして憧れへとまっしぐらに進める強さ。その二つを兼ね揃えた女性の後姿に、雪蓮はただ頭を垂れる他なかった。
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