第一章
[2]次話
謀の果て
晋の献公が驪戎を攻めてその娘達を連れ帰った時晋の臣の一人里克は娘達の顔を見るやすぐに献公に言った。
「明公、あの娘達ですが」
「どうしたのだ」
献公はその叡智が感じられるがやや険しさもある里克の顔を見つつ彼に言葉を返した。
「あの娘達に何かあるか」
「二人共顔に非常に悪い相が出ております」
「悪い相がか」
「はい、禍々しいものがあります」
こう主に言うのだった、何処か呆けた感じの顔の彼に。
「二人共生来邪悪なものを持っていると思われます」
「美しい娘達ではないか」
「奇麗なものでもその実毒を含んでいるものです」
里克は献公にこうも話した。
「ですから」
「あの二人はか」
「すぐに殺してしまいましょう」
「今すぐにか」
「そうせねばかならずこの国に害を為します」
「まさか。女ではないか」
それ故にとだ、献公は里克に笑って返した。
「大したことは出来ぬ」
「妲己も女ですが」
かつて殷の紂王を惑わしたこの女の名前も出した。
「ですからここは」
「あれだけの美しき女達だ、勿体ない」
献公は里克の話を聞き入れなかった、それで驪戎の娘達を自身の後宮に入れた。そうしてであった。
それぞれの子を為した、ここで里克は親しい者達に言った。
「あの二人の妃達に注意するのだ」
「何かあるのか」
「驪戎から連れて来られたお二人に」
「最初は泣いていたが今は明公の寵愛を受けて贅沢に暮らし泣いていたことを悔やんでいる」
二人のこのことから言うのだった。
「あれは生来邪な性である証」
「そう言うか」
「ではあのお二方は」
「これからか」
「いよいよ晋によからぬことをする」
こう言うのだった。
「それぞれ生まれたお子からな」
「まさかと思うが」
「お二人のお子を公につけようとされるか」
「この晋の」
「そうだ、既に晋には申生様、重耳様、夷吾様の三人の優れたお子がおられるが」
それでもというのだ。
「お二方のそれぞれのお子のどちらかをな」
「晋の公にされようとか」
「動かれるか」
「いよいよ」
「そうだ、これはまことに危ういぞ」
里克はとかく二人を危うく見ていた、それで何とか取り除こうとしていたが献公は二人を寵愛し続けていてだった。
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