第六話〜指針〜
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江はとぼけてみせる。しかしこれにも理由がある。江たちがやっていることは法に触れているからだ。
塩の販売は漢王朝が政府直々に行っていることであり、その他の取り扱いは許容されていない。その結果民の生活は圧迫されることになる。
そこで江はまず塩の密売に目を付けた。初めは桃蓮も反対してはいた。しかし政府が管理する塩はあまりにも高すぎる。あまりにも民に厳しい。そうなると桃蓮が折れるしかなかった。
当然それらの動きを監視する役人もこの荊州、揚州にいる。
だから役人には賄賂を握らせた。幸か不幸か赴任してきている役人は皆汚職を重ねてきた愚図ばかりであり、二つ返事で了承した。何より彼らはどう塩を製造するのかさえも知らなかった。
塩を作るのにはどうすればいいか。
江は考えた。簡単なことだと。海水を蒸発させればいいと。
知っての通り海水は塩辛い。ならば絶対塩が含まれている。海水を整備した海浜に引き、天日で蒸発させれば、より塩辛い海水が出来る。
あとはそれを火で熱すれば、塩が残るのではないか?江はそう考えた。そしてその考えは間違っていなかった。
とはいえ、これは揚州まで勢力を広げた呉だからこそ出来たこと。それを益州でやろうにも海がない。塩は高級品。結果塩は足りなくなり、民に負担がかかる。
そのことを察し、江は益州太守・劉焉に密使を送った。そして密売経路を確保し、今に至るのだ。今となっては二つの勢力の仲は良好。これも今後にいい影響を及ぼすだろう。
「賊上がりだからこそそういった思考も出来た。そう考えるとあの5年も無駄ではなかったようですね」
そう昔に思いを馳せる江。彼が思い浮かべているのは、亡き実母のことか。あるいはその地獄の日々か。はたまたその両方か。
いずれにせよ、儚げに物思いにふける江に、穏は声をかけることができなかった。
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