第六話〜指針〜
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会合に名を連ねるだけの経験も知識も、そして権力もないのだ。
いつもより遥かに豪華な面々をそろえた執務室。その中央に座す焔と祭。それらを取り囲む呉の将たち。今回の会合の議題が祭たちから切り出されることは明白であった。
と、村を賊たちにより廃村とされた民の移住問題に関する最後の竹簡に目を通し、印を押した江はフゥと一息つき、視線を義母へと向けた。
「大体予想がつきますが、此度の召集の理由は何でしょうか?母様」
「あなたはホントにからかい甲斐がないわね。昔はあんなに―――」
「母様?」
聡い息子に対してほんの少しの当てつけ。それも不穏な雰囲気を噴出しながら自らを呼ぶ江によって遮られる。実のところ、最近の江の焔に対する態度は一時期に比べてやや冷たい。
無論江は何の理由もなしに人を遠ざけたり、蔑ろにすることは有り得ない。つまり冷たくされる理由は多分に焔にあるのだ。
具体的に言うと
・執務中にも関わらず酒に酔って、同じく執務中である江に抱きつく
・やたら江の体を触る
・食事や酒に怪しい薬を混ぜる
・朝起きたら、隣に焔がいる(おそらく貞操は無事)
正直江は恐れ慄いていた。これは母の子に対する態度としては常軌を逸している。
他にも掘り返せばいくらでも出てくるのだが、それは今回の本題ではないので割愛する。
「江の過去か…聞いてみたい気もするの―――」
「蓮華?」
「ひゃ、ひゃいすみません!」
「江様、お仕事お疲れ様でした」
「ありがとうございます。思春」
思春の、労いの言葉とともに差し出された茶を受け取る江にはもしかしたら暴君の素質があるかもしれない。尤もあるとしたら間違いなく君主に戴くことは有り得ないが。
「さて、話が逸れたの。まぁ江以外にも察しのついている者は当然おるじゃろうが、桃蓮の言葉についてじゃ」
祭に話を立て直されるあたり、江も相当に壊れているかもしれない。忙殺という言葉がぴったりである。
何はともあれ、祭の言葉により弛緩していた場の雰囲気も引き締められる。
「発言とは『天下を獲る』というものでいいのか?」
「ええ、それで構わないわ。蓮華ちゃん」
この面子を集め、尚且つ桃蓮の発言とくれば導き出されるものも自ずと見えてくる。さらに言えば、まだ
孫呉の中でも最高幹部しか知らない内容なのだ。
それを下の者たちに伝えるにも幹部同士で整理や打ち合わせをしておかなければ、のちに障害となるのは容易に想像できることであろう。
「あの発言を受けて、各々はどう思った?どう感じた?」
「まぁ私はそんな予感がしてたわね」
「策殿には聞いておらぬ」
桃蓮と同等かそれ以上の直感を持つ雪蓮の意見
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