第六話〜指針〜
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一枚の書状があった。
「ふむ…ようやく起きたな。?良よ」
書状の内容をあらかじめ予測していたような口ぶりである。無論書かれていることは黄巾の乱についてだ。傍らにいる文官姿の男はその言葉に合わせて、薄く笑みを浮かべる。
「はっ、ようやく起こってくれました」
男はどうやらこの大乱の勃発を喜んでいるようだ。
「これで」
ここで仏頂面だった老人の表情に変化が起こる。
そこには憎しみ、妬み、狂気を湛えた笑みが浮かんでいた。
「長きにわたる因縁にケリをつけられる」
玉座の間に狂ったような高笑いが長く響き渡った。
――――――――――――――――――――――――――――
指針は決まった。
しかし、それでも急激に日常が変わるわけではない。それには二つの理由がある。
一つは、桃蓮が天下を獲ると決めたこと自体が、大陸の覇権の象徴たる漢王朝に対する反逆行為に他ならないからだ。事を明るみに出すにもタイミングを見誤れば、ただの蛮勇だ。
二つ目―これが一番大きいのだが―は、内政や鍛錬は常日頃から取り組むべきことであり、例え天下を狙おうとも狙わないとしても、やっておかなければ国が成り立たなくなってしまう。
特に内政は国民の生活に影響する。殷王朝、秦王朝、そして現在の漢王朝を見れば分かるとおり、民を蔑ろにした国に未来などないのだ。
故に孫呉陣営は敵の主力部隊と合間見えるまで各地に出没する少数の団体を相手にしなければならない。つまり何が言いたいのかというと………
「いい加減執務室での飲酒はお控えください…」
江の胃痛の種が無くなる日は未だ遠いということである。
いや、江だけでなく、それは夕にも言えることだろう。現に形のよい額に青筋を浮かべている。穏においてはその限りではないのだが。
「そう硬いことを言うな。わしらとてただ飲むためだけにここにいるわけではないのじゃ」
「…へぇ、理由を是非聞いてみたい」
「まあまあ、夕ちゃん落ち着いて。今回ばかりは祭の言うとおりなのよ」
しれっと抜かす祭に、苛立ち混じりに問いかける夕。そしてそれらを仲裁する焔。最近度重なる激務とある意味無神経な重臣の態度が、夕の理性の砦をガリガリと削り取っている。
祭に対しての言動も、夕の苦労を知る者であれば間違いなく注意はできない。むしろ江のようにいつまでたっても礼儀正しいのが異常なくらいなのだ。
「……確かにいつもとは様子が違うのは確かですね」
江はそういって執務室の中を見渡す。
その場には、江、夕、穏、祭、焔のいつもの面々以外にも雪蓮、冥琳、蓮華、思春がいた。明命、蒼―徐盛―はまだこの
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