第二章
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「供えものをくれませんか」
「死んだ人へのかい」
「はい、死んだ人は供えものを食べません」
それでというのだ。
「ならお墓に捧げて後は腐るだけですね」
「だからかい」
「腐らせるなら勿体ない」
男はこのことは残念そうに語った。
「ならです」
「あんたが食うっていうのかい」
「そうすればいいでしょう」
「そうかい、しかしそんなものを食うなんて」
死者へ供養の為に出すもの、それをというのだ。
「あんたも随分変わってるな」
「どうせ捨てるのですから」
「食うっていうのかい」
「しかもお金もいりません」
男は平然としていた、むしろ笑ってさえいる。
「ならです」
「余計にいいのかい」
「はい、どうでしょうか」
「まあ捨てるだけだしな」
墓参りをしている者もだった、供養に捧げる食べものが後どうなるかはわかっていた。そしてだった。
それならと頷いてだ、男に答えた。
「食ってくれ」
「それでは」
こうしてだった、男は供えものを譲り受けてだった。
平然と食べはじめた、中には供養を終えて去った者達がいたが彼等の先祖の墓のところに行ってだった。
供養のものを食べた、それでだった。
彼は満足して後は遊びに行った、その一部始終を見てだった。
妻も妾も嘆いて話した。
「何て人なのかしら」
「お墓参りの供養するものを貰うだなんて」
「それで食べるなんて」
「誰もいないと平気で取って食べるなんて」
「信じられない人だわ」
「何て恥知らずな」
男の笑顔も思い出して言うのだった。
「あんな人と一緒だなんて」
「私達も嘆かわしいわ」
「子供はあんな恥知らずに育てたら駄目ですね」
「ええ」
妻は妾にその通りだと答えた。
「あんな恥知らずになったら」
「どうしようもないから」
「だからね」
「せめて子供は」
「大事に育てましょう」
「立派な人に」
このことを誓ってだった、二人はそれぞれの子を熱心に育てた。よい人の弟子にして学問にも武芸にも励ませた。
だが男は相変わらずだった、外出の度に。
満足して帰ってきていた、それで言うのだった。
「偉い人達に招かれて食べてきたよ」
「今日もですか」
「そうしてきましたか」
「そうだよ」
妻と妾に笑顔で答えるのだった。
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