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卑しい男
第一章

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               卑しい男
 中国の古い話である。
 ある男がいつも外出しては腹一杯になって満足して帰ってきていた。
「いやあ、食った食った」
「いいものを食わせてもらった」
「お陰で腹一杯だ」
 上機嫌で言っていた、それでだった。
 彼と共に暮らしている妻と妾が二人で彼に尋ねた。
「あの、何処で召し上がられていますか?」
「いつもそうされてますか?」
「偉い人達のところに招かれてだよ」
 男は妻と妾に笑顔で答えた。
「それでだ」
「いつもですか」
「お腹一杯になるまで召し上がられてますか」
「そうだよ、有り難いことにな」
 こう二人に答えるのだった、だが。
 妻と妾は彼の言葉を聞いて不思議に思った。
「うちの人そんなにね」
「はい、偉いでしょうか」
「知り合いが尋ねてきたこともないし」
 家にというのだ。
「偉い人とお付き合いがあるとか」
「聞いたことがないですね」
「なら誰と食べているのでしょうか」
「そこが不思議ですね」
「それなら」
 気になる、それでと言うのだった。
「一度ね」
「外出した時に後をつけて」
「それで確かめてみましょう」
「それがいいですね」
 二人でこう話してだ、それでだった。
 妻と妾は二人で男が外出すると言った時にこっそりと後をつけた、すると街の賑やかなところを通り過ぎた。
「あれっ、街から離れるわね」
「そうですね」
 二人共このことを不思議に思った。
「街の偉い人達のところにも行かないで」
「街の外れの方に行くわね」
「一体何処に行くのかしら」
「あちらは」
 男が行く方はというと。
「お墓ですよ」
「そうね、お墓ね」
「あんなところに行ってどうするのでしょうか」
「さて」
 二人共首を傾げさせた、だが男は。
 自分が後をつけられていることなぞ全く気付かずにだ、墓場の中に入ってだった。そこで墓参りをしている人達のところに行ってだった。
 平然とした顔でだ、こう言った。
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