第二章
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だがその日々も終わった、玄宗のお気に入りであり貴妃の養子でもあった節度使の安禄山が叛乱を
起こしたのだ。
玄宗は多くの者を連れて都を去って難を逃れることとなった、その時に不安にかられた兵達が暴発した。
その為皇帝と共にいた楊貴妃の一門である楊氏の者達が次々と殺されいよいよ貴妃となった。玄宗はこの事態に対して皇帝の威厳を以て言った。
「貴妃に何の罪があろうか」
「お気持ちはわかりますが」
この時も皇帝に従っていた高はその前で平伏しつつ言葉を述べた。
「ですが」
「それでもか」
「はい、やはりです」
「貴妃もか」
「楊家の者達は皆殺されていますし」
「貴妃だけはとはいかぬか」
「ですから」
それ故にというのだ。
「この度はです」
「致し方ないか」
「はい、ここはご決断を」
高は兵達の刃が皇帝に向かうことを恐れていた、今の彼等は最早理性を失い何をするかわからなかった。
皇帝を守らなくてはならない、だからこそ高は言ったのだ。
「是非」
「わかった、ではな」
「その様に」
こう言ってだった、高はようやく皇帝に決断してもらった。だが玄宗は楊貴妃に対して最後の別れを告げた時に。
落涙していた、その涙と共に言うのだった。
「怨むなら朕を怨むのだ」
「いえ」
李白が言う通りだった、どの様な花がどれだけ集まろうとも敵わぬ美貌であった。ふくよかな白い頬には紅がさし切れ長の長い黒く輝く瞳には見事な長い睫毛がある。
眉の形も唇の形も整い鼻や耳も麗しい、豊かなまとめた黒髪に見事な肢体が服の中に覆われているのもわかる。
その貴妃は涙を流す玄宗に微笑んで言うのだった。
「これまでのことを思えば」
「怨まぬのか」
「私は万歳老のお心を受けたまま笑ってこの世を去ります」
これが貴妃の返事だった、そして実際にだった。
貴妃は絹で首を絞められて死んだが最後まで笑みであった。玄宗はその死を項垂れて聞くばかりであった。
やがて乱を起こした安禄山は息子に殺されその息子も史思明に殺されこの史も自分の息子に殺されるという因果を経てだった。
乱は終わった、玄宗は既に息子に位を譲り上皇となっていたが都に戻ることが出来ていた、だがその傍に楊貴妃はもうおらず彼は抜け殻の様になっていた。
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