ZARA編
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「ほら〜、持って〜」
空になったグラスを俺に渡すザラ。
「お、おう」
大人しく受け取ると、今度は肩に手まわして、俺ごと引き寄せるようにしてワインを注ぎ始めた。
「うお、おい、ザラ……」
「ほら飲んで飲んで。私の故郷のお酒ですよ〜、不味いわけないですよ〜」
そろそろ、ザラも言語が怪しくなってきた。が、今の俺はそんなこと考えている余裕はない。
やばいやばい。心臓の鼓動が激しくなる。顔に血が上るのがわかる。酒のせいだけではない。というかついさっきまで標的となっていたのは他の艦娘たちで。俺はそこまで飲んでいない。待て待て待て、近い近い近い、本当に酔ったポーラみたいになってんぞ。
「ザラ、放してくれ。飲むから、入れてくれた分はちゃんと飲むから」
「や〜だ〜、て〜とく、放すとすぐ他の娘のとこ行っちゃうじゃないですか〜」
「はあ?」
「さっきだってちょっと目を離したらポーラの方に行っちゃうし、初めの方は千歳さんとか隼鷹さんとばっかり話してるし、鳳翔さんとは仲良さそうだし」
そりゃ提督やってりゃ艦娘とは仲良くなるだろ、という言葉を飲み込んだ。
これはチャンスなんじゃないか。今いるのは個室に近い座敷部屋で、一緒に飲んでいる三人は完全にダウンしている。つまり、今俺はこの部屋で、ザラと二人きり。
「な、なあザラ」
本当はこんな状態で言いたくはないが、今日の執務室でのやり取りを考えると、今後言う機会は、本当に指輪を渡すタイミングになってしまうかもしれない。
「あの、ちょっと話があるんだけどさ」
俺はザラの腕をかいくぐって抜け出すと、姿勢を正す。
「あの、この間、艦隊強化の一環としての限界突破のシステムがうちの鎮守府にも導入されたのは知ってるだろ。それで、その限界突破なんだけど……」
そこまで行ったとき、俺は右肩に重みを感じた。
気恥ずかしさから、無意識にザラから外していた視線をそちらへ戻すと、肩の上にザラの頭が乗っている。
「……おい、ザラ、おーい」
スースーと安らかな寝息が聞こえる。ただ眠っているだけのようだ。
「……やれやれ」
※※※※
結局、そのあと、鳳翔さんによって、寮の部屋から呼び出された飛鷹と千代田が、隼鷹と千歳を回収していった。そして残るはイタリア艦姉妹なのだが駆逐艦ならいざ知らず、さすがに重巡クラスの娘を二人同時に運ぶのは無理がある。
そんなわけで、ザラとポーラの相部屋の鍵を持っているのがザラだったので
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