ZARA編
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にはまだ指輪の話はできていない。だから、イタリア艦のまとめ役をお願いしつつ、演習での旗艦をやらせて、練度を上げてきた。もちろん、これまで何度か言おうとしたことはあった。しかしそれも直前で踏みとどまってしまったり、例の酔っ払いの邪魔が入ったりで、結局言えていないのだ。
俺は執務室を見渡した。補佐をやってくれる大淀はもう上がったし、こんな夜更けにここに来る人間はいないだろう。そして部屋の中には俺とザラだけ……
「……なあ、ザラ」
意を決した俺の声に、ザラが振り向く。
「何ですか、提督」
夜だからか、手に負えない妹を見た後だからか、いつもより綺麗に見える。その微笑みに、俺の決意はもろくも揺らいだ。
「あ、いや……この後、時間はあるか。さっきポーラを無理やり追い出しちゃっただろ。だからこれ終わったら鳳翔さんとこに行こうかと思ってな……一緒にどうだ?」
見事なチキンである。いや、何とか彼女自身も同じ席に誘えただけでも、上出来なのだろうか。そもそも指輪を渡そうという相手にこれでは先が思いやられるというものか。
「別にいいですよ。私もポーラがご迷惑をおかけしていないか見ておきたいですし」
「そ、そうか」
「それでは報告書を仕上げちゃいますね」
そういうとポーラはみたび書類に目を戻して、ペンを走らせ始めた。
※※※※
「て〜とく〜、ほらほら、飲み足りないんじゃないの〜。ほらグラス出して」
死屍累々。そんな光景が俺の目の前には広がっていた。
「おい、そろそろやめといたほうがいいんじゃ……」
「え〜、いいじゃな〜い。おいしいんだからさ〜」
問答無用で、俺の目の前にワインボトルが差し出される。ここで拒否するとボトルごと口に突っ込まれそうな勢いである。というか、実際にそれの被害者が俺の脇でぶっ倒れている。
なみなみとグラスに注がれるワイン。どう見ても酔っ払いの酩酊状態のくせに、酒を注ぐ手は微塵もぶれない。
「お、おう。ありがとう」
申し訳程度に口をつけて、俺はグラスを置いた。
そして、あえて正面に座ってにこにこと自分のグラスにワインを注ぐザラと目を合わせないように、横に倒れているポーラを起した。申し訳ないが、ここは生贄として蘇生してもらうしかない。
「……おい、ポーラ。お前の姉は酒を飲むといつもこうなのか」
「いつもですよ〜。ザラ姉様もワインは大好きですし……」
後のセリフが続かない。あのポーラが、常時酩酊といっても過言ではないポー
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