瑞鶴編
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据えるんだがな)
※※※※
夕方。空母寮のリビングで、翔鶴は帰ってきた妹を迎えた。
「おかえりなさい、瑞鶴。赤城さんへの贈り物は買えたの?」
「……買えた」
「そう。もう加賀さんに渡した?」
「……渡してきた」
「そう……あれ、今日は髪下ろしてたの? 可愛いじゃない」
「ちょっ……翔鶴姉……」
急に顔を上げてバタバタし始める瑞鶴。その顔は真っ赤だった。
「どうしたの瑞鶴。顔が真っ赤よ、風邪?」
「……そうかも」
瑞鶴は言葉も短く、部屋の方へ踵を向けた。
普段なら翔鶴の隣に座って、姉妹の団欒に花を咲かせるところである。それどころか、翔鶴と目を合わせようともしない。
「? 何かあったのかしら。提督と? でも、せっかく加賀さんが気を使ってセットしてくれた機会だったんだし……」
部屋に戻って戸を開ける。部屋の内装は至ってシンプルで、最低限のものの置き場と机、そして翔鶴と共有している二段ベッド。
荷物を放り出して、二人で一枚の姿見の前で直立不動の真顔を作って見せる。しかし、真っ赤な顔だけは隠しようがない。ちょっとほっぺたを引っ張ってみたり、はたいてみたりするが、一向に効果はない。
あきらめた。
瑞鶴は二段ベットの上の段に、一足飛びで飛び込む。
そして、枕に顔を押し付けると
「あああああああああああ」
爆発した。
枕に顔突っ込んだまま、バタバタと悶える。ベッドがきしむ音が部屋に響くが、気にしない。
(あああああ、無理無理無理無理、提督さんの前じゃ頑張ってたけどこんなの無理だよ、大体なんで髪下ろしてるのに全然気付かないのに、気付いた途端にレイテの時の話とか、心臓止まるかと思ったじゃない、何、何、私が勝負所で髪下ろすの知ってたの、いや、いや、絶対そんなことない、翔鶴姉にだって言ってないのに、てか私も私よ、翔鶴姉にやってもらったって何、翔鶴姉が聞いたら一発でばれちゃうじゃない、今からでも口裏合わせてもらう、でも翔鶴姉だって理由を聞くだろうし、あーなんであんなことしたんだろう、遅刻してまで慣れないことしていったのに、結局何も進まなかったじゃない、気合入れていった私がばかみたいじゃない……)
瑞鶴の大暴れは、部屋の異音を聞きつけた翔鶴が踏み込んでくるまで続いた。
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