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巣立ちの若鶴
発動! MO作戦
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「こちらこそ。頼りにしてるわよ」

 

 瑞鶴は姿勢を正して右手を額に挙げる。脇を軽く締めて手のひらを内側に向ける海軍式の敬礼である。隣の翔鶴もそれに倣う。

 

「ふふ、それは頑張らないとね」

 

 時雨の声を合図に、四人の駆逐艦が一斉に敬礼の形をとった。凛とした瑞鶴たちの敬礼に比べればずいぶんと可愛らしい光景であるが、彼女らも開戦以来船団護衛を受け持ってきた精鋭で、こと対潜戦闘においては一定の経験値がある。

 

「さて、私たちの第一目標地点はと……」

 

 懐から海図を取り出す瑞鶴。急に呼ばれてきたと思ったら、即作戦に投入されたということもあり、トラックより南方の海域についてはまだ十分には把握できていない。

 

「ここか。南方の一大前線基地、ラバウル」

「まずは鹿島さんに頼まれたお遣いね」

 

 出航の直前、五航戦には鹿島から、作戦とは別の任務が与えられていた。そのためにMO機動部隊は南方に向かう途中、五航戦を切り離してラバウルへと向かわせることになっている。

 

「よし、行くわよ。艦隊、輪形陣。対潜警戒に重きを置いて、進路を南方に取れ」

「了解!」

 

 トラックがずいぶんと後方に流れてしまっている。六隻はその陣形を保ったままで南へと舵を切った。

 

「こちら第五航空戦隊、旗艦瑞鶴。戦隊旗艦、聞こえますか」

『こちらMO機動部隊旗艦妙高。感度良好です』

「進路は南に取りました。前方にそちらの部隊も目視できています」

『了解。そのまま南進します』

「了解しました」

 

 機動部隊の片割れ、妙高らの主力部隊は、瑞鶴らとは少し離れた前方に位置しており、同じような速度で南進している。ここまでは順調である。

 

「ふう、これで当面は大丈夫ね」

「お疲れ様、瑞鶴」

 

 機動部隊とは別に、攻略部隊の方も、中継地点のラバウルへ向けて進路を切っているはずである。またこの作戦に先行して行われたツラギ島の攻略も、水雷戦隊のみで成功している。これで前線に陸上機や飛行艇による警戒網が形成される。

 作戦の事前段階は滞りなく進んだ。

 

後はすべて、南方に展開する艦娘たちにゆだねられたのである。
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