暁 〜小説投稿サイト〜
巣立ちの若鶴
発動! MO作戦
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っきの会議を聞いてて、言っておきたいことがあるのよ」

「え、それはどういう意味でしょうか……」

 

 まさか、先ほどの会議での瑞鶴の態度について問いただされるのではないか。そう感じた翔鶴がわずかに警戒を強めた。

 

「瑞鶴さん」

「……なによ」

 

 瑞鶴はというと警戒心全開である。しかし、妙高の口から出てきたのは、意外な言葉だった。

 

「MO機動部隊の、航空戦の指揮、貴方に一任したいんだけど、いいかしら」

「……えっ」

「さっきの会議での意見具申、見事だったわ。本当は全部の指揮を私が取るつもりだったんだけど、やっぱり餅は餅屋っていうか、貴方に任せた方がうまくいきそう」

 

 瑞鶴の警戒心が息をひそめたように消える。その隙間に、安堵と誇らしさと嬉しさが潜り込んでくるが、それが顔に出るのを、寸でのところで堪えた。

 

「そ、そうなの? 信用してもらえるっていうんなら、別に何の問題もないわ……任せといて」

「本当? 受けてくれるのね。それじゃあ、明日以降は、航空隊は一任するわ」

 

 そういって妙高は、瑞鶴の手を握った。突然のことにまだいろいろとついてきていない瑞鶴だが、かろうじてその手を握り返した。

 

「任せて。五航戦の力、見せたげるわ」

「ふふ、頼もしいわ。それじゃ、私たちはこれで。明日の集合、遅れちゃだめよ」

 

 そういうと、妙高は瑞鶴らに背を向けた。その後ろにいた羽黒も、心なしか、初めよりも晴れやかな顔で、ぺこりと頭を下げた。そして踵を返すと、先に行った姉の後を追いかけていった。

 

「……よかったわね、瑞鶴」

「……何がよ、翔鶴姉」

「またそんなこと言って。うれしいんでしょ」

「……まあね」

 

 意見具申は通らなかったし、会議の中で、何の役にも立ってはいない。しかしそれでも、第五航空戦隊は間違いなく、一歩前に進んだようだ。

 



 

「第五航空戦隊、旗艦瑞鶴、出撃します」

「同じく翔鶴、出ます」

 

 翌日、五月一日。MO機動部隊は、トラック泊地を出航した。編成は予定通り、重巡を中心とした主力部隊と航空母艦とそれを護衛する駆逐隊からなる航空部隊、そして瑞鶴と翔鶴の背中の矢筒に、矢の形で収容された、二隻合計で百を超える艦載機である。

 トラックの港を出て、外海に出ると、先に出港して待機していた二十七駆が、並走する二隻の周りを囲むように集まってくる。

 

「瑞鶴さん、よろしくね」

 

 瑞鶴たちの前を走るのは、二十七駆旗艦の時雨。左右には初春型の夕暮、有明。そして後方には元気印の白露である。

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