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船出の若鶴
船出の若鶴
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驤さんや第一線は退いているけど、鳳翔さんだっている」

「でも、敵はどんどん強くなるんでしょ。私たちも早く前線に……」

 今の一線級の空母は、どれも多少なりとも実験艦の要素を持つ。そのデータが翔鶴型につぎ込まれているのだが、それゆえに、彼女らがいつまで前線で通用するのかは重大な問題なのだ。だからこそ、翔鶴型には期待が寄せられ、瑞鶴はそれを真に受けて、気負いすぎた。

「瑞鶴、あなたは気負いすぎている。私たちは焦らなくてもいいのよ。だってまだ建造されてから一年じゃない。今はまだ鍛錬を積んで、十分な練度を得て、将来に備えればいいのよ。大丈夫、まだ、私たちは先輩に甘えていいのよ。先輩たちが支えてくれる期間を、もっと信頼してもいいんじゃないかしら」

 



 

「加―賀―さん」

「何ですか。……何がそんなに面白いんですか」

 会議室を出て廊下を歩く二人。赤城はやたらと楽しそうに、加賀を追いかける。

「どうしてあんなきつい言い方したんですか。瑞鶴、落ち込んじゃって、もう立てないかもかもしれないですよ」

 白々しく、わざとらしく、加賀をあおる赤城。あなたの考えていることくらいわかってますよ、と言わんばかりだ。

「……別に。事実を言ったまでよ。あの程度で折れるのなら、一航戦を継ぐ資格はないわ」

加賀は足を止めることもしない。

「弓の話だってそう。あの子たちの弓は近いうちにもっと強力な短弓に交換されるのは、加賀さんも知ってるでしょう? そうなれば、短い分取り回しやすいあの子たちの艤装の方が高い能力を発揮できるわ」

「どちらにしても、今の練度ではしょせん『五航戦』です。今のままでは一航戦は継がせることはできません」

「ふふふ。でも、継がせるつもりはあるのね」

 加賀の足が、ぴたっと止まった。はっ、と顔を上げた加賀は、ついつい言葉尻に出てしまった本音に対してにこにこと笑みを浮かべる赤城を真っ赤な顔で睨むが、すぐに観念したように続けた。

「……当然です。私たちは戦艦から改造された、『つなぎ』です。流用されているデータも鳳翔さんの分しかありません。二航戦の二人も、まだデータ不足。大型空母四隻を下敷きにして作られたあの子たちが、将来を担うのは当然です」

改装空母である赤城や加賀、龍驤、実験艦である鳳翔はさることながら、初の計画段階からの大型空母である飛龍、蒼龍に至っても、まだまだ問題は多い。空母に必要な要素のバランスが悪いために、速度や防御力が犠牲になっているのだ。

「あの子たちはほぼすべての面で、私を含む艦隊の空母全部を上回る潜在能力がある。だけども、それを生かしきるには一年足らずの訓練では足りていない」

「だから、あんな言い方したんですか」

「……わかっ
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