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船出の若鶴
船出の若鶴
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せん」

 瑞鶴には一瞥もくれない。加賀はさっさと立ち上がると、自分の弓を持つと、加賀と瑞鶴を交互に見ながらおろおろしている翔鶴の席の横をすり抜けると、そのまま会議室を出て行ってしまった。

「あ、赤城さん……」

 仕切りなおす前より、むしろひどくなった状況に、翔鶴は残った赤城に助けを求める。しかし、赤城も、助けを求める翔鶴には応じす、相変わらずのにこやかな笑みだけを向けて、加賀の後を追って会議室から出て行った。

 



 

「ねえ、瑞鶴? 加賀さんたちも出て行ったし、そろそろ私たちも寮へ戻りましょう」

 返事がない。

「ねえ、瑞鶴?」

「……によ」

「え?」

「……なによ、偉そうに……性能は私たちの方が上じゃない。100年早いですって、馬鹿にするんじゃないわよ。一年よ、一年あればあんな中途半端な空母に負けないんだから……」

 ぶつぶつと加賀への言葉を並べ立てる。

「あの、瑞鶴? 加賀さんの言ってることは正しいし、私たちが練度が足りないのは事実で……」

「わかってるわよ!」

 ようやく顔を上げた。怒りといら立ちのこもった目は、涙で潤んでいる。翔鶴に当たったところで、意味がないのもわかっている。それでも、瑞鶴は目の前の姉に言わずにはいられなかった。

「翔鶴姉は悔しくないの? 私たちはこんなもんじゃないって、あいつらに認めさせてやりたくないの?」

 艦隊の大先輩であり、空母という艦種の草分けでもある一航戦。空母の集大成ともいえる翔鶴型にとっては、超えるべき壁であると同時に、憧れの対象でもあるのだ。その彼女らに認められたい、瑞鶴はその一心で、今日の会議に臨んだのだろう。しかし、結果はさんざん。認められるどころか、「未熟者」の烙印を押されて早々に見切りをつけられたしまった。

「私たちは、あの人たちを超えるために作られたんだよ? あの人たちが積み上げた、「空母」の集大成として。それなのに……むぐっ」

 突然、瑞鶴の言葉が打ち切られる。

 涙目でまくしたてる瑞鶴の頭を、翔鶴は優しく胸に抱きこんだ。

「む、んんっ」

 誰も見ていないとは言え、いい年して姉の胸に顔をうずめるという状況に、顔を真っ赤にしながら抜け出そうとする瑞鶴。翔鶴も、それに抵抗することはなく、すぐに瑞鶴の頭を話した。

「瑞鶴、私だって悔しいわよ。一航戦の先輩方にあそこまで言われれば。だけどね」

 翔鶴は、強制的に落ち着かせた妹を、諭す。

「今は、別に認めてもらえなくてもいいんじゃないかな」

「え」

 目を丸くする瑞鶴に、翔鶴は笑いかける。

「だってそうでしょ。今艦隊には、一航戦の赤城さんと加賀さん、二航戦の飛龍さん蒼龍さん、軽空母だけど龍
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