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船出の若鶴
船出の若鶴
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けの速度がある。30ノットにも満たない低速艦相手なら、補って余りある性能よ」

 先ほどぶつけきれなかった不満を叩きつけるように、息巻く。瑞鶴の反論はもっともだと言えよう。翔鶴型には艦隊最高出力の機関に加え、脚部の艤装の形状にも波を割って進む特殊な形状が採用されている。もともと大型戦艦として建造された加賀と比べ、10ノット近くも高速なのだ

 

それでも加賀は、ぴしゃっと言い放った。

「なら、貴方たちはそのご自慢の速度を、完全に使いこなしているというの?」

 うっ、と得意げな瑞鶴の顔が引きつった。

「艦載機の発艦の時に、正確な風上に向かって、まっすぐに全速航行しながら、揺れをおさえて発艦作業。外洋の荒波の中で、貴方たちにはそれができるの、と聞いているのよ」

「……そりゃ、いずれは……」

「深海棲艦に対する反攻作戦はもう目の前に迫っているのよ。貴方たちの成長を悠長に待っている余裕はないの」

 

 瑞鶴が唇を噛んで黙り込む。確かに最新式の翔鶴型であれば、その速力で艦載機の初速などいくらでも上乗せできる。しかし、最新型故に、加賀との間には十年以上のキャリアの差があるのだ。まだ外洋にほとんど出たことのないひよっこでは、加賀の言う通り航行技術の面で、その差を埋めるどころか詰めることすら不可能である。

 

「それともう一つ」

 追い打ちをかけるように、加賀が続けた。

「外洋航海の練度もそうだけど、貴方たちの航空隊の練度はまだ低すぎる。反攻作戦までもう幾ばくも無いわ。それまでに発着艦と編隊飛行くらいは問題なくできるようにしておくことね。話はそれからよ」

「で、でも、私たちの飛行隊だって最近すごいのよ。この間の急降下爆撃の演習だって……」

「あの程度の成果で誇る時点であなたは未熟よ。急降下爆撃ならせめて命中率八割を超えてからね」

 返す言葉もない。命中率六割がせいぜいの瑞鶴の航空隊と、精鋭中の精鋭といわれる加賀の航空隊では次元が違う。

 

なにも、加賀だけではない。彼女らと肩を並べる二航戦の飛龍と蒼龍も同様の練度を持っている。一線級になるには、絶対に超えなければならない壁なのである。今の瑞鶴では到底届かない。一航戦どころか、一線級に肩を並べることすら許されないということだ。

 

「さて、言いたいことは済んだかしら。貴方たちが一航戦を名乗ろうだなんて100年早いのよ。最新であることだけでなれるほど、一航戦の名前と誇りは軽くないのよ」

 今度こそ、瑞鶴も反撃の言葉を失った。瑞鶴はうつむいたまま、力なく椅子に座り込んでしまった。

 

 そんな瑞鶴を見て、加賀はまた一つため息をついた。

「行きましょう、赤城さん。これ以上、言うことはありま
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