船出の若鶴
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た赤城が、柏手に唖然とする五航戦姉妹に微笑んだ。あまりに場違いな展開に、瑞鶴は毒気を抜かれたかのように、元の席へと座りなおした。翔鶴も、小さくなったままではあるが、多少の緊張は解けたようで、椅子にまっすぐ座りなおした。
「ほら、加賀さんも」
「……赤城さんがそういうのなら」
加賀も、驚くほど素直に矛を収めると、会議室に漂う殺気が嘘のように消え失せた。
「はい、結構です。そもそも、加賀さんはいつも説明を端折りすぎるんですよ。相変わらず不器用なんですから」
赤城に言われて、加賀はバツが悪そうに、ぷいっと横を向いてしまった。赤城はそれを確認すると、もう一度五航戦姉妹の方を向き直った。
「さて、それでは、改めて、あなた方二人に一航戦の席を譲れない理由をお伝えしますね」
加賀とは違う、にこやかな声。しかしそれでいて、後輩二人が自然に背筋を伸ばすだけの、不思議な威圧感があった。
「それでは、加賀さん、もう一度、丁寧に、お二人にお伝えしてあげてください」
「え、私が、ですか」
「はい」
微笑む赤城に、反論の視線を向ける加賀だが、やがてあきらめたようにいまだにむすっとしている瑞鶴の方に向き直った。
こほん、と咳ばらいを一つはさむと、
「まずは弓よ。翔鶴、貴方の弓を貸してちょうだい」
「は、はい」
加賀の要求に、翔鶴が机の下から、自身の艤装の弓を取り出した。
「……?これがどうしたっていうのよ」
「そうね、私たちのと比べてどう?」
加賀も同じように机の下から自分の艤装を取り出す。しかし、翔鶴のようにすんなりとは出てこない。何しろ、加賀や赤城の艤装の弓は、彼女たちの体とほとんど同じ長さを持つ、長大なものだからである。対して翔鶴型の艤装の弓は、腕の長さよりも少し長いくらいの短弓だ。
「……長さが全然違いますね」
「確かにそうだけど。何が問題なのよ」
何も分かっていないのね、と後輩二人に対して加賀はため息をついた。
「弓の長さは艦載機を打ち出すときの初速に関わる。貴方たちの弓じゃ、いずれ大型の艦載機は発艦できなくなるかもしれない」
確かにその通りではある。弓の長さは艦載機の初速に直結する。現在の最新式である零式艦上戦闘機や九九艦爆は問題なく扱えているが、戦力化が予定されている彗星艦爆は従来より大型化しているし、これからの艦載機は重武装化に伴って大型化が予想される。当然今よりも初速も求められるようになるだろう。
しかし、瑞鶴はすぐさま立ち上がって反論の声を上げた。
「でも、いくら弓による加速が効くにしても、船の速度が遅かったら艦載機の初速なんて上がらない。私たちにはそれを補えるだ
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