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戦国異伝供書
第五十七話 善徳寺の会盟その七

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 その容姿が姫達にも受け継いでいる、それで義元も言うのだ。
「あの方をでおじゃるか」
「左様、そう致す」
「それでは」
「そしてそれがしは」
 今度は晴信が氏康に話した。
「新九郎殿に黄梅を送ろう」
「あの姫君を」
 ここで氏康は晴信を見た、苦みばしったいい男ぶりである。実は武田家は代々美形が揃っていることで有名なのだ。
「そうして頂けるか」
「それで宜しいか」
「武田殿の姫君も美貌揃いというが」
「ははは、黄梅もですぞ」
「とりわけと聞いておりますが」
「いや、それがしの娘は皆顔が整っていて」
 晴信は何気に子煩悩も見せた、具足を脱いだ彼はそうした父親なのだ。
「誰がとは言えませぬ」
「左様でありますか」
「その中からです」
「黄梅殿をですな」
「そうさせて頂きまする」
「では麿は」
 最後に義元が言って来た、見れば彼も化粧をしているが元々の顔立ちはわかる。貴公子然とした美男子である。上品さがそこにある。
「武田殿に嶺松を」
「確かあの姫君は」
「ほっほっほ、菖蒲か杜若かと」
 義元は笑ってこうも言った。
「そこまででおじゃるよ」
「その姫君を送って下さいますな」
「そうさせてもらうでおじゃる」
「その姫君を太郎の室に」
「それでよいでおじゃるか」
「有り難き幸せ」
 これが晴信の返事だった。
「さすれば」
「これでいいでおじゃるな」
「それがしも」
「では話はこれで進めるとしまして」
 そしてとだ、ここでまた雪斎が言った。
「それからはです」
「うむ、ではでおじゃるな」
「我等にお任せを」
 雪斎はこう言ってだった、その後は山本そして幻庵と話をしていった。晴信達は後は茶室で義元が煎れた茶を飲んだが。
 ふとだ、晴信は義元にこんなことを言った。
「貴殿の家臣に松平竹千代という御仁がおられますな」
「あの者でおじゃるか」
「随分と出来た御仁とか」
「ほっほっほ、まだ若いでおじゃるが」
 それでもとだ、彼は言うのだった。
「元々の才もあり日々学問と精進に励む」
「そうした方でありますか」
「左様、だからでおじゃる」
「今後は」
「当家の柱になる者でおじゃる」
 今川家のというのだ。
「今から楽しみでおじゃる」
「それはよいことですな」
「当家は麒麟を得たでおじゃるよ」
 義元はこうまで言った。
「まさに、そういえば」
「そういえばとは」
「当家もよい御仁がおるとか」
 武田家もというのだ。
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