IF 完全平和ルート
偽装結婚シリーズ
偽装結婚最後の話
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結婚と言うか、偽装結婚を申し込んだ事自体私の方だったからな! っぷ、くふふふ……!」
腹を抱えて笑い狂うその人の姿を憎々し気に睨むと、男は明後日の方向へと視線を向ける。拗ねた様にも見える動作に、その人の笑いの発作はますます悪化した。
「っは、ははは、あははは! あーもう、笑い過ぎて腹筋が痛い……!」
「……一度黄泉路を歩いてみるか、貴様」
「それは御免被る。私は孫娘が大きくなった姿を目にしてから死ぬつもりだから」
眦には涙をたたえながらも、真剣な表情でそう宣言してのけたその言葉に男は面白く無さそうな顔をする。仕舞いには間に挟んだ柱に凭れ掛かる様にして完全にそっぽを向いた。
「いーね、マダラ! オレ、お前のそーいう人間じみたところ大好きだ」
「ほざけ、ウスラトンカチ」
男のそんな態度を目にして、ますます楽しそうに板張りの床をバンバンと手の平で叩きながらその人は腹を抑える。
一頻り笑い転げてから、その人もまた柱を間に挟む形で男の背に自分の背を合わせ、膝を抱え込む姿勢を取った。
「……なあ、マダラ」
「何だ」
「今まで、色々とありがとうな。お前がなんだかんだ文句こそ言いつつも、これまでずっと協力して来てくれたお蔭で、私は私の願いを――“夢”を叶える事が出来た。……感謝してる」
「……貴様のやり方があまりにも間抜けすぎて見ていられなかっただけだ。生ぬるいにも程がある」
「そーだよな。――そうやって私が馬鹿な事をしたらお前がぶん殴って止めてくれて、お前が行き過ぎたら私が止めて……。たまにそれが行き過ぎて殺し合いにまで発展しちゃった時もあったりしたけど、そう言う時は……里の皆が止めてくれたよなぁ。……考えてみれば、私達ほどおかしな付き合い方をした人間はそういないよな」
ふふふ、と愉快そうにその体が震える。
膝を抱え込んでいた両手をそっと外して、男同様に柱へと凭れ掛かる。解放された両手が気だるげな動きで床板へと添えられた。
「――昔は何度もぶん殴ってやりたいと思う事も多かったし、正直今でも時折思ったりはするけども」
「…………」
「けど、まあ、なんだ――……お前に出会えて本当に良かったよ」
「…………」
「おい。返事がないと、なんだかつまらんのだが」
「…………」
「あのさ、なんか反応でもしてくれよ」
「聞きたい事があるならさっさと聞け、気色悪い」
男が無愛想にそう告げれば、柱を挟んだ背中合わせに相手が軽く息を飲んだ気配がした。
どこか恐れている様な、怖がっている様な、そんな空気が一瞬だけ漂う。
「――……なぁ、マダラ」
ぽつり、と風が吹けば直ちに紛れて消えてしまいそうな声音が零れた。
「……お前は、後悔していないか?」
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