IF 完全平和ルート
偽装結婚シリーズ
偽装結婚最後の話
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
【禄】
多分、切欠はほんの些細な一言だったのだ。
「ねーねー、お祖母さま。お祖母さまはどうしてお祖父さまと結婚したの?」
少女の他愛無いその言葉を耳にしたその人は、白い湯気を上げる湯のみからそっと口を外して、好奇心に満たされた栗色の瞳に視線を合わせた。
「ん? どうしてそんな事を聞きたいんだ、つーちゃん?」
「アカデミーの宿題で、自分の身近な人について調べて来なさいって言われたの!」
にぱ、と笑いながらの返答に、その人は優しく眦を緩める。
愛しくて仕方が無いと言わんばかりの表情を浮かべられ、少女は照れくさそうに笑った。
「それでクラスの友達とお話しして、プロポーズについて作文を書こうってなったの!」
恋に恋するお年頃――と言う訳でもないが、多感な少女の常としてやっぱりそう言う事は気になるのだろう。でもお父様とお母様は忙しそうだったから……と消沈する可愛い孫娘の言葉に、その人は僅かに考え込む仕草を取る。
「他ならぬつーちゃんの頼みだもの。いいよ、なんでも聞くといい」
「本当!? じゃ、じゃあ、どこでプロポーズしたか教えて!」
結局、二人は東側の空が群青色に染まるまで仲良くお喋りに興じたのであった。
――そうしてその数日後。
孫娘と心和やかに会話していたのと同じ場所で、その人は意外な客をもてなしていた。
「やあ、ヒルゼン君。君が私の屋敷にやって来るのは久しぶりだね」
「自分としては出来ればあんまり来たくなかったんですけど、ね」
肩を落とし項垂れた態度の年嵩の青年に不思議そうに首を傾げながらも、その人は手にした急須で茶を注ぐ。そうしてなみなみと茶が注がれた湯のみを青年の方へと差し出した。
「随分と元気が無いな。去年から君の強い希望でアカデミーの教師として赴任したと聞いたんだけど、子供達の世話に疲れたのか? だとしたら体力が落ちたんじゃないか、ヒルゼン君」
「だ、れ、の! 誰のせいだと、思っているんですか!!」
それまでの悄然とした態度を豹変させて、怒りの表情を浮かべてみせた青年の剣幕にその人は驚いた様に目を瞬かせる。
初めて相見えた時と同じままの老いる事のないその容姿を見つめ、青年は疲れた様に溜め息を吐いた。
「そうでした……、貴方はそういう人でしたね……」
「だ、大丈夫なのか? ヒルゼン君」
「取り敢えず、これを見て下さい……」
そうして差し出された一枚の作文用紙。
そこには少女らしい丸い筆跡で文章が記されていた。
『わたしのお祖母さま
わたしのお祖母さまは初代火影です。
つよくてカッコいい、わたしのあこがれのくのいちです』
「何これ、全然文句の付けど
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ