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ヌーマイトの光
第一話

 朝、ハイレインは屋敷のとある部屋に向かっていた。そこは仕事部屋でもなければ弟の部屋でもない。しかし、ハイレインにとってとても重要な人がいる部屋だった。手元に鍵を出し、そっと鍵穴に差す。右に回すと、ドアが開いた。そこには可愛らしく装飾された空間が広がっていた。桃色に白い花があしらわれた壁に、赤の絨毯。女の子の誰もが憧れる白いレースの天蓋付きベッド。そこに一人の女の子が眠っていた。
「おはよう、ヌーマイト。」
ハイレインが優しく声をかけると、ヌーマイトは上半身をベッドから起こす。
「ハイレイン様……おはようございます。」
真っ黒な瞳をハイレインに向けるヌーマイト。ハイレインが彼女をヌーマイトと命名した理由もそこにある。まるで天然石を埋め込んだかのような瞳を見て名づけたのだ。
「よく眠れたか?」
「はい。とても。あと昨日の遠征、お疲れ様でした。」
朗らかに笑うヌーマイトの黒髪をハイレインはそっと撫でる。そしてヌーマイトの片手を握り、部屋の外へ連れ出した。
「朝食の前に、お前に来てほしい場所があるんだがいいか?」
「もちろん。」
白いレースでできたネグリジェのまま、ヌーマイトはハイレインの後に続く。階段を下った先の食堂ではランバネインが食事をしていた。
「ランバネイン様、おはようございます。」
ヌーマイトが頭を下げると、気づいたようにランバネインは手を振る。
「おはよう、ヌーマイト! それに兄上も!」
豪快な笑いを浮かべるランバネイン。そこに言葉を続ける。
「兄上もヌーマイトも朝食はまだ食べないのか?」
「ああ、少しヌーマイトと用事がな。」
「ハイレイン様との用事が終わったらすぐ食べます。」
「そうかそうか! 気をつけてな!」
ランバネインは手元のコーヒーを飲み干し、庭へと消えていった。
「ヌーマイト、行くぞ。」
「はい。」
二人は食堂を後にし、さらに階段を下る。艶のあったフローリングの床はいつの間にか固い特殊加工のものに変わっていた。
「ハイレイン様、ここは確か……」
ヌーマイトが言い終える前にハイレインは頷く。そしてヌーマイトを一番奥の部屋へと連れて行く。
「今は大丈夫か?」
部屋の扉の前で白衣を着た男にハイレインは尋ねた。男は短く頷く。手元のパネルを操作し、扉が横に開いた。
「感謝する。」
ハイレインの言葉に男は「いえいえ。」と答えた。それは気に留めず、ハイレインとヌーマイトは部屋へ入る。それと共に扉が閉じた。その部屋は床と同じ素材の壁と天井で覆われ、様々な機材が置いてある。扉の前にいた男と同じような白衣を着た大人数人がなにやら忙しく動き回っていた、
「皆ご苦労。ヌーマイトを連れて来た。」



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