第四十二話「天央祭・V」
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「美亜さーん!私の歌、どうでしたか?」
美九のライブが終わり休憩と次の準備のため今ライブは停止していた。未だに圧倒されている彼女の元へ美九がやって来る。先程纏った霊装のままであった。
「…すごかった。それ以外に言葉はないよ」
「ふふ、それは良かったですー。本当は男なんかに私の声を聞かせたくはないんですが美亜さんが目の前で応援してくれたので最後まで歌えました〜」
どうやら彼女に最前列のチケットを渡したのは美九の精神安定も兼ねていたようである。そんな打算的な美九に彼女は苦笑する。
「…次は来禅高校の演奏だけどこれを聞いた後だと、ね」
「ふふ、当たり前じゃないですか。私は士織さんを手に入れるために手は緩めませんよ?」
「知っているよ。美九がそう言う性格だってことをね」
そう言って美九の頭を撫でる。美九より身長が十センチほど高い彼女が撫でると彼氏彼女にすら見えてくる。美九は嬉しそうに目を細め頬を緩める。
「えへへ〜」
緩まった口からアイドル、いや女性とどうなのかと取れる言葉が出てくる。幸い機材の故障なのか会場は暗かったため美九のその姿に、そもそもここに美九がいる事すら気付いていなかった。
「…そろそろ来禅高校の番だ」
「そうですね〜。でも、私に勝つなんて無理ですよ〜」
「…分からないよ。いくら美九の声が凄くても、それを超える事は可能なんだから」
「…ふふふ、美亜さんは面白い事を言いますね」
美九は彼女の言葉に一瞬眉を顰めるも直ぐ何時もの表情に戻り可笑しそうに笑う。そこには自分が得意な歌で負けるはずがないとと言う自信が伺えた。
確かに美九の歌は凄まじかった。彼女を超える事などアマチュアの士道では不可能だろう。しかし、美九は気付いていないのだ。この勝負の勝利条件を。気付いていたらここまで歌に力を注ぐことなど出来ないだろう。とは言え美九がこれで少しでもいい方向に変わればいいと考え何も言わなかった。
「ほら、そろそろ戻らないと…」
彼女は美九に戻るように伝える途中で背後を向く。正確には背後の天井部分。彼女の表情は段々険しくなっていく。いきなりの事に美九は困惑する。
「…?どうかしましたか?」
「…いや。すまないが美九。少し用事を思い出した。少し、外に出てくるよ」
「?構いませんけど…」
彼女は美九の怪訝そうな視線を背後に感じながら急いで外に出た。そして、ライブが始まる直前、天宮スクエアのはるか上空で複数の爆発音が響いた。
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