第四十話「天央祭・T」
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『これより、第25回、天宮市高等学校合同文化祭、天央祭を開催いたします!』
天井付近に付けられたスピーカーから実行委員の宣言が響くと同時に、各展示場が拍手と歓声に包まれた。
天央祭の元々のルーツは天宮市が出来て間もないころ、各高等学校が人数の少なさゆえに盛り上がりに欠けていたのを何とかしようと考え合同で文化祭を主なった名残である。
天央祭は天宮市の高校全てが出店するため大変規模が大きいものとなっている。正面入り口から近い一号館、飲食関係の模擬店がある二号館、奥の三号館、四号館には様々な研究発表やお化け屋敷などの簡易アトラクションが集められていた。
そしてTシャツにジーパンと動きやすい服装に身を包んだ彼女は二号館にいた。理由は単純である。よく食べる彼女は食べ物に釣られる形で二号館に来ているだけである。
そして彼女の目の前にはとある看板があった。
『メイドカフェ☆RAIZEN』
そしてその下で必死に呼び込みをする五河士道、いや士織の姿があった。美九との勝負に勝つためになりふり構っていられないのであろう。
「(…別なところにするか)」
態々ここじゃなくても飲食店はある。自分とはほとんど関係ないとはいえ敵に塩を送る様な真似をする必要もないだろう。そう思い目の前を通り過ぎようとした時だった。
彼女の両腕を誰かががっしりと掴む。彼女は驚きのあまり左右を何度も見る。そこにいたのは
「いらっしゃいませー!一名様ですね?直ぐにご案内しまーす!」
「士織の言うとおりだ!こっちへ来るといい!」
逃がさないとばかりに暗い笑みを浮かべる士織と彼女の正体を知っていないと思われる無邪気な笑みを浮かべる十香の姿があった。振りほどこうにも士道はともかく十香は霊力を封印されたとは言え【プリンセス】の名を持つ精霊である。故に、彼女の抵抗は無意味な結果となり彼女はメイドカフェに引きづられるように来店することとなった。
「(…なら、せめて軽く押さえるだけにしてさっさと出よう)」
不本意な出来事に腹を立てた彼女は心の中でそう決意するのであった。
「…すいません。ナポリタン追加で」
「はーい!ナポリタンの追加が入ったよー!」
彼女がメイドカフェに引きずられるように入店して一時間が経過した。彼女の周りには空となった皿が山盛り置かれており先ほどから吸い込まれるように彼女の胃の中に入っていく料理の数々をみて周囲の客は感心を通り越しドン引きしていた。
とは言え彼女の食べ方は上品でありその姿に見惚れる客(主に男性陣)が増えあっという間に店の前には行列が出来ていた。
「(…本当はダメなのに、でも美味しい)すいません。オムライス追加で」
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