第三十九話「鳶一折紙」
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鳶一折紙にとって精霊とは両親を殺した憎き存在である。折紙は今でもあの当時の事を鮮明に思い出すことが出来る。
真っ赤な炎に包まれる住宅街。遠くに見える両親の姿。
そして、刹那の時を持って白い光が目の前を通過し両親のいたところを大きく抉っていた。
その元凶、炎とその精霊が放つ光のせいで姿こそ見えないが両親を殺した憎き存在。
既に両親を殺した精霊について、折紙は知っているが決して手を出す事は出来ない。
識別名【イフリート】。天宮市の住宅街を焼き尽くし折紙から両親を奪った存在は自らが愛する五河士道の義理の妹。いくら両親を殺した憎き精霊としても士道の悲しむ顔は見たくない。
故に折紙は琴里から霊力の反応が消えた事を理由にこの問題を放棄した。同時に今の自分では彼女を殺す事など出来ないと悟ってしまった。
最凶最悪のCR-ユニット〈ホワイト・リコリス〉。脳への負担こそ大きいものの理論上その火力は精霊に届きうる性能を持っている。それをもってして彼女には、イフリートには届かなかった。
だが、今折紙の手の中には精霊を殺せる力がある。例えそれが悪魔からもらい受けた力であろうと、この力なら精霊を殺せる。その理解が折紙の心に大きな闇を作っていた。
9月22日。天央祭を明日に控えた折紙はASTの駐屯地に来ていた。自らのCR-ユニットの整備のためである。いくら学生とは言え自身はASTに所属している身。整備を怠ることなど出来るはずがなかった。
「(…可笑しい)」
折紙は声にこそ出さないがそんな疑問を感じていた。彼女がいる格納庫には折紙以外にもASTの隊員や整備員がいるが彼女らの表情は何処か何時もと違って見えた。緊迫感、それも出撃前の時に似ているものだった。
「(…でも、何か作戦行動があるとは聞いていない)」
何かしらの作戦があるなら一隊員である折紙にも知らせが来るだろう。しかし、折紙の元にそんな知らせは無くそれが余計に折紙に疑問を持たせる要因となっていた。
ふと、折紙の左方から何かが走ってくる音が聞こえてくる。そちら側を見れば資材を抱えて走ってくる女性、整備主任のミルドレッド・F・藤村二等陸曹の姿があった。
ナイスタイミングである。折紙はミルドレッド、通称ミリィが自らの前を通り過ぎるのを確認して、彼女の首根っこを掴む。
「ふぎゃっ!?」
猫が潰れたような悲鳴を上げミリィは尻餅をつく。そして直ぐに立ち上がると元凶である折紙に食って掛かった。
「な、何するかー!ミリィの頸椎に何かあったら責任とれるですかー!」
「ミルドレッド、聞きたいことがある。近々何か特殊な作戦でもあるの?」
折紙
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