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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
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、脚には蹄があった。
グール。
人の骸を好んで食べることから食屍鬼とも呼ばれる怪物だ。
「こいつらを食べちゃって」
「GISYAAA……!」
できたてホヤホヤの死体という、新鮮な状獲物に歓喜のよだれを垂らして食らいつく。
がぶり、ぞぶり、ごそり、くちゃり、ぞぞり、こつり、じゅるる、くちゃ、ぱく、ごぼ、ばり、べき、ぼこ、ぞぼぼ、ぺちゃ、ばり、ぼり、ぺき、ぱき、ぽき、ぺきん、ごぶり――。
食屍鬼の食欲は旺盛だ。肉のひとつまみ、骨のひとかけら、血のひとしずくも残さずにたいらげるのに、さして時間はかからないだろう。
「
女主人様
(
ミレディ
)
。皇帝陛下からの使者か参りました」
腰をわずかな絹で隠しただけの少年が来客を告げる。虚ろな表情は彼がミサの魔法によって精神支配されているからだ。
「ヘラルド坊やからの使い? 珍しいわね」
ヘラルド=フォン=ブルースフィア。ブルースフィア帝国の皇帝。時の最高権力者のことを、この少女は坊や呼ばわりした。
「皇帝陛下よりの
詔勅
(
しょうちょく
)
である――」
「…………」
アールスハイド王国は現在国内を跳梁する魔物の対応に追われ、国防がおろそかになっている。この機を逃さず帝国は全軍をもって出陣し、王国を征服する。ミサ=キルシュバオムもそれに参陣し、力を尽くすように――。
使者は口上を述べると彼女に一瞥もくれず、逃げるように退出した。
「国内の擾乱に乗じて攻め込む。ヘラルド坊やらしい姑息なやり口だこと。けれどまぁ、いい暇潰しにはなりそうね。飛んで火に入る蛾どもを蹴散らすよりも軍隊を相手にするほうが面白いもの。ケヒャハハハハハ!」
圧倒的な魔力で軍勢を蹴散らし、蹂躙する。その様を想像するだけで高ぶったミサは全身から魔力を放出させて弓を射る動作をすると、純粋な魔力の塊が夜空を駆け、月に照らされた叢雲に穴を開けた。
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