第三十二話「問答・前編」
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の屋上以来全然姿が見えなかったから少し心配していたんだ。…傷の方は大丈夫か?」
「…心配?」
士道の思いがけない言葉に彼女はきょとんとする。やがて気を取り直した様で直ぐに何時もの表情に戻る。
「別に、あのくらいなら直ぐに治るわ。私、精霊だけど少し特殊だから」
「そ、そうなのか。よかった」
「は?何であなたが喜ぶの?意味が分からないんだけど?」
「いや、だって。あんなに怪我していたんだから心配するのは当然だろう?」
「…そう」
彼女はまだ納得しているとは言い難かったが追及する気はないらしく一言で片づける。…そこへ、料理を持った店員がやって来る。
「お待たせいたしました。スペシャルハンバーグランチです」
「あ、それ私のです」
店員が運んできたのは士道から見ても巨大なハンバーグ。恐らく普段士道が食べるハンバーグの倍以上の量を持っているだろう。それを目の前の彼女は注文したと言う。
「…本当にそれを食べるのか?」
「ええ。何せ貴方の奢りなんだもの。好きなだけ食べさせてもらうわ」
「そうか、俺の奢り…奢り!?」
彼女の言葉に再び士道は声を上げる。彼はてっきり自分のお金で食べている物だとばか思っていたからだ。そんな士道に彼女は「何を驚いているの?」という顔をする。
「無理矢理ファミレスに連れ込んだくせに食事の一つも奢らないの?随分と傲慢な人ね」
「い、いや。そういう訳じゃないんだけど…」
士道はそう言いながら財布を確認する。先程買い物を済ませたばかりであり財布の中は少し心もとない状況だった。一応、二千以上するスペシャルハンバーグランチなら払う事は出来る位には持っていたが。
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…ダメ?」
「…ワカリマシタ」
無言の攻防の末士道の財布からお札は消えるのであった。
余談ではあるがスペシャルハンバーグランチを余裕で完食した彼女は追加のお代わりを頼もうとして全力で士道に止められていた。
その大食い精神から士道は十香を思い出したとか。
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