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戦国異伝供書
第五十六話 高僧の言葉その七

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「非常にお強いので」
「あの家とことを構えることを考えると」
「後顧の憂いはなくすべきです」
 幻庵は氏康に強く言った。
「前はこの小田原まで来させて難を逃れましたし」
「戦って勝てる相手ではありませぬ」
 氏康もこう言うのだった、政だけでなく粘りのある采配と受けた戦の傷は全て向こう傷であるという彼ですら。
「ですから」
「それで、ですな」
「武田殿、今川殿ともはです」
「確かな盟約を結び」
「何もない様にしましょう」
 こう氏康に話した。
「ここは」
「それが一番ですな」
「それでは」
「叔父上の言われる通りに」
 これが氏康の断だった。
「このことはです」
「任せて下さいますな」
「そして武田殿、今川殿と」
 二人とも、というのだ。
「お会いしましょう」
「それでは」
「思えばお二方とお会いするのも」
 縁はこれまであったがというのだ。
「はじめてですしな」
「大名同士が会うことは」
「そうそうないですね」
「はい、ですが」
「今回はですな」
「そのことを踏まえても」
 それでもというのだ。
「よいことなので」
「是非ですな」
「お会い下され」
「それでは」
 氏康は自身の叔父に確かな声で頷いて応えた、そのうえで晴信と義元に会うことを楽しみにすることにした。
 三家の話は進みそしてだった。
 駿河の善徳寺で会うことになった、そのことを受けてだった。
 信繁は少し疑念を感じる顔になって兄にこう言った。
「駿河となりますと」
「父上じゃな」
「はい、今川殿も気を使って下さいますが」
「父上は何をされるかわからぬからな」
 晴信もこのことが気になっていた、それで言うのだった。
「急に寺に来られてもな」
「不思議ではありませぬ」
「そこが少し気掛かりであるな」
「はい、そこは雪斎殿に」
「お話しておくか」
「それがいいですな」
「うむ、ではな」
 信繁の言葉に頷いてだった、晴信はその場に控えていた山本に顔を向けてそのうえで彼に言った。
「そのことじゃが」
「はい、既にです」
 山本は晴信に会心の笑みで答えた。
「そのことは雪斎殿とです」
「話しておるか」
「大殿には駿府から温泉に行ってもらい」
「そこで湯治をか」
「過ごしてもらうとのことです」
 雪斎にそうしてもらうというのだ。
「このことはもう雪斎殿からです」
「言われておるか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「このことはです」
「杞憂であったか」
「そうなります」
「ならよい」
「全く以て」
 晴信だけでなく信繁も安心した笑みになって述べた。
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