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夫婦鐘
第二章

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 教会の神父の名前は洗礼名はアントニオ、本名は李高尚といった。年老いた穏やかな雰囲気の狼人の男だ。
 その神父が二人に深刻な顔で話した。
「実は二つの鐘が毎朝です」
「毎朝?」
「はい、鐘がある場所から離れているのです」
 そうなっているというのだ。
「そして毎朝元の場所に戻しています」
「毎朝か」
「見張っていますと」
 神父は梁に話した、勿論ラザワウナリスンもいる。
「どちらの鐘も自然と鐘が本来ある場所から離れ」 
「そうしてか」
「いつもこの街の北東に向かいます」
「その方角にかいな」
「毎朝そうした動きをしていて」
 そしてというのだ。
「私達はです」
「その鐘をやな」
「元に戻しています」
「それが異変やな」
「お二人にはです」
 旅の冒険者、神父はそう思っている彼等をというのだ。
「この異変の究明とです」
「解決をやな」
「お願いします」
「そうさせてもらうわ、ただな」
「ただといいますと」
「気になるんは方角や」
 その二つの鐘が動く方だとだ、梁は話した。
「そこやな」
「そちらですか」
「そや、そこやな」
「香港の北東って」
 どうした場所かとだ、ラザワウナリスンも話した。
「中国や」
「そや、香港は南と東が海でな」
 梁は香港人として話した、今は素性を隠しているので自分達が起きた世界の話は一切出さずにそうしたのだ。
「北東もな」
「中国やな」
「そっちや、中国の方にな」
「何かあるんか」
「果たしてな、中国と関係なくても」 
 それでもとだ、梁は言った。
「香港の方に何かあるか」
「それをやな」
「調べるか」
「そうするか」
 こう話してだ、二人はまず教会から見てそちらの方角を調べた。すると北東においてあることがわかった。
「あそこ墓地があったけどな」
「香港で一番大きな墓地やな」
「ああ、けどな」
 その墓地がとだ、梁はラザワウナリスンに教会の中で暗い顔で話した。
「その墓地が問題でな、昔は無縁墓地やったんや」
「こっちの世界での香港ではか」
「それもこの街で大疫病が流行って当時の医学や術ではどうにもならんで」
「死ぬまでか」
「身体がな、もう魂になってな」
 そうしてというのだ。
「蘇らせるしかなかった」
「そうするまでか」
「そや、それでわしは詳しくないが」 
 梁はさらに話した。
「人の魂は二つあるな」
「魂魄やな」
「このうち魂は何度でも。寿命はあるか人は復活するが」 
 それでもというのだ。
「魄の方はな」
「そっちはか」
「身体に一つで、死んだら魂から新しい身体が戻っても」
 それこそ身体が完全に消失しても魂は不滅でそれがある限り寿命まで蘇ることが出来る、この世界ではそうなのだ。
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