五話 その日の始まり
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まで聞き終えるとトールは乗り出していた身を落ち着け、スツールに腰を落とすと大きく安堵の息をついた。
「心臓に悪いなまったく、俺のいないところでそんな無茶しないでくれよ」
「いや確かにびびったけど、倒せない相手じゃなかったと思うぜ?わりに合わねえと思ったから逃げてきたけどさ。多分俺達三人なら余裕で狩れるんじゃねえかなアレ」
飄々とそんなことを言ってのけるアルバ。ボスクラスのモンスターを指して、自信過剰にも聞こえそうな台詞だったが続いたシュウの言葉もそれを否定するものではなかった。
「ああ、少しはやり合ったが飛びぬけた攻撃力やスキルを持ってるわけでもなさそうだった、次に戦う機会があれば凌いでみせるさ。なんだったらトール、これから受けに行ってみるか?MAPデータなら俺達から渡せるぞ」
「……いや、興味はあるけど今日は別件で出かけなくちゃいけないんだ」
「別件?」
「ああ、また私用で悪いんだがまずミドウさんに会っていかないといけない」
「――それは丁度良かったな」
その言葉の意図が理解できず首を傾げたトールの後ろにある席に、先程のヨルコのような女性以上に珍しいといえるかもしれない高齢のプレイヤーが腰掛ける。顔立ちには重ねた年齢を感じさせる皺が幾重に刻まれているが、引き締まった表情には衰えなど感じさせない力強さが滲み出ている。
老爺は少年たちの会話に間が生じると、ちらと視線を彼らのほうへ傾け声を発した。
「無事にやっているようだな」
その声にハッと振り向くトール、今気づいたというように眉端を上げるアルバ、老爺が現れた方に顔を向けていたため特に反応も見せないシュウと、三様の反応で少年たちが見た老人はSAOにて職人プレイヤーとして活動している彼らにとっても馴染み深い人物だった。
「ミドウさん!」
今話にも上がったばかりのこのミドウという名の人物。鍛冶スキルを習得しておりシュウ達が扱う武器、金属製防具の製作者であり、コミュニティの活動を支援するプレイヤーの一人でもあった。
このSAOにおいて職人スキルによるアイテム生成行為にはスキルレベル、使用道具を除き出来具合に干渉できる要素は存在しないのだがこの老人は寄せられたオーダーメイドの依頼を
『今日は日が悪い』
などと偏屈な職人のように言い捨て拒否することがある変わり者だった。しかしそれだけのこだわりあってか、彼の製作する武器はランダムパラメータにより品質が変動しやすい中、高水準のものが多く常連客も少なくないらしい。
「エルキン氏に会いに来たのだが、応対中のようだな」
「新しくコミュニティに参加される方達なんですよ、しかし丁度良か――」
奥のテーブルで話すエルキンを見て呟いたミドウにトールが何事か言い出そうとし
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