五話 その日の始まり
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、初めて四十七層回ったとき怪しいと思ってたんだよなーあの猟師。ただこのクエストやるんなら注意一つ」
アルバは神妙な面持ちで人差し指をぴんと立て、興味深そうに聞き入っていたトールに告げる。
「クエスト受注してる間だけ見えるらしいオブジェクトからこいつを手に入れたら妙な――何ていうか、見えないトンネルをくぐらされたような感覚がしてさ、嫌な予感して確かめたらダンジョンが結晶無効化エリアになってた」
「無効化……そんなクエストがあるのか」
結晶とは魔法という要素がほぼ存在しないこのSAOにおける唯一のマジックアイテムである。使用者を任意の街やホームへ転移させる転移結晶、対象のHPを瞬時に全快させる回復結晶など、使い捨ての消耗品にしては高価な品だったがいずれも緊急時の回避手段として中層以上のプレイヤーには必携のアイテムとなっていた。
「クエスト情報も更新されててさ、採取して脱出するまでがイベントとしての流れなんだろうけど、こっからが本題だ」
そこまで言うと嫌なことでも思い出したかのようにアルバが眉根を寄せ、それをまぎらわすように残っていた半分の焼き菓子を口の中へ放り込んだ。そのままもごもごとしながら続きを語ろうとしたところに、いつの間にか注文していたらしい紅茶系とおぼしき香りを放つドリンクが注がれたカップを置いてシュウが口を挟む。
「食べながら喋らなくていい。それで、採取した帰りだがダンジョン自体は四十七層だからな、湧くモンスターはレベル的に軽く狩れる程度のやつばかりだが、帰り道にどうしても通らないといけないエリアに……クエストモンスターなんだろう、普段見ないやつが湧いてたんだ」
説明を引き継いだシュウもそこで言葉を切り、思考を整理するようにカップから紅茶を一口飲んで間を空けてから再び語りだす。
「ハニー・イーターっていう、また分かりやすい名前のモンスターだったんだがな。……三メートルぐらいはあるんじゃないかって熊で、何の冗談か知らないがHPバーが三本あった」
「な……っ、三!?」
先程から驚かされてばかりいるトールだが丸くしている目と口から、その度合いが本日最高のものだと窺い知れた。SAOのモンスターで複数のHPバーを持ちうるのはエリアボス、フロアボスといった普通なら複数人のプレイヤーでパーティーを組み挑むのが前提とされる強敵の証明である。そんなモンスターにたった二人で遭遇したと聞かされ平静でいられなかったらしい。
「大丈夫だったのかお前達!?」
「だったからここにいるんだろ……」
「思いつきでやったことだが、俺の方で採取したアンバー・ハートをオブジェクト化させて放ったら食いついていってな。そっちに気をとられてる間に脱出できたんだ。……おかげで俺はクエスト失敗になったが」
そこ
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