五話 その日の始まり
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
よりアルバ、さっさとあれを出せ」
「どんなキャラだよお前の親父さんは……ほいっと」
呆れながらアルバは既にオブジェクト化されていたアイテム、小さな手のひらサイズの樽を取り出し、カウンター上に置いた。そこでトールは先程エルキンが持ってきた彼らが注文していたらしいものの存在に気づく。
格子状に凹凸が並ぶ狐色の小さな焼き菓子。現実世界でいうワッフルのようなそれのみが皿に乗っている。朝食というには遅く昼食には早すぎる時間帯にそんな料理を注文していることに疑問を持ったトールが二人に顔を向けると、そこではアルバが得意気な顔をして今しがた取り出した樽に指で触れ、ポップアップウィンドウを浮かび上がらせた。
そのままウィンドウから《使用》の項目が選択されると触れていたアルバの指先が仄かな紫色に光り出す。特定のアイテムでのみ可能な対象指定モードと名のつくそのエフェクトをアルバが焼き菓子の表面にジグザグに走らせるとその軌跡に、鮮やかな金に色づきながらも透明度の高い、とろりとした液体が塗られていく。
「これは……」
「アンバー・ハートっていう蜂蜜系のアイテムさ。四十七層の大分外れにある村で受けられるクエストでゲットできた」
それだけ答えると黄金色の蜜で彩られた焼き菓子にかぶりつく。一口で半分を頬張ったそれを咀嚼すること数秒、きつく目を閉じ辛抱堪らないといったリアクションを見せながらアルバが悶える。
「くーーーーっ、凄ぇ甘さだなこれ!ぜんっぜんくどくねぇし、なのに濃厚ってか……」
「ああ、これならあんな目にあったのも報われるな」
同様の操作で焼き菓子にトッピングをしていたシュウも同意し舌鼓を打っている。余程満足のいく味わいが得られたらしく、その頬が僅かに笑みの形へと持ち上がっていた。
「そんなに美味いのかそれ」
「おう!しかもこれな、一回分でHPの上限値が八〇〇プラスされる効果もあるんだよ」
「なっ、ステータスアップアイテムか!?」
一人その感覚を共有していなかったトールが発した問いへの返事に驚愕する。SAOにおけるキャラクター固有のステータスとしては実質HP、筋力値、敏捷値の三つしか存在しないのだがこれまでにそれらのパラメータを上昇させるアイテムが存在することが確認されていた。
上昇値はいずれも微々たるものだが通常レベルアップすることでしか強化できないそれらを増強できるアイテムは当然の事ながらプレイヤーの間で超のつくレアアイテムとして重宝されている。
「一回性のクエストだったからな、おそらく一人のプレイヤーにつき一個限定。NPCの話からして開始条件はおそらく一定のレベルとドロップする森林ダンジョンのマッピングだろう」
「寄った街のNPCには全部話しかけるようにしてるからさ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ