五話 その日の始まり
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普段からすれば丁寧な口調で自己紹介を終えた二人にトールは頷くと、一旦カウンター奥に視線を巡らせ問いかけた。
「エルキンさんは留守か?」
「いや、今俺らで注文を入れたところだから厨房だよ、すぐに戻ってくると思うぜ」
アルバの言葉が終わらないうちに奥の厨房施設に繋がる通路から白黒のバーテンダー風衣装に身を包んだ店主、両手に小さな皿を持ったエルキンが姿を現した。シュウらと話すトールに気づくとにこやかな笑みを浮かべながら歩み寄ってくる。
「やあトール君、今戻ったのかい?」
「はい、用事自体はわりと早く片付きましたから。それで少し五十層に寄る必要があったんですが、こちらの二人と会いまして」
そう言ってシュウ達にしたようにヨルコ、カインズの二人を紹介すると、エルキンも表情を引き締め、二人に体を向ける。
「コミュニティの方針は理解してもらえてるのかな?」
「ええ、俺に出来る説明はしてあります、レベルも五十は超えているようですから条件はクリアしているかと思います」
「よし……おっとすまない、アルバ君とシュウ君に注文の品がまだだったね」
エルキンは手に持っていた小皿をシュウとアルバの前に置くと店内の空席を確認し、空いている隅の一角をヨルコらに示してみせた。
「ではまず集まりでの活動内容や決まりごとなどを私から説明しましょう、お二方あちらの席によろしいですか?」
「ええ、よろしくお願いします」
そうして案内され二人は店の奥のテーブル席に向かう、コミュニティに参加する上での最低限のルール説明がこれからエルキンによりなされるのだろう。基本的にコミュニティへの参加条件は一定のレベルに達していることぐらいだが、あからさまにマナーを守らない、倫理道徳に欠ける輩は加入を認めないことになっている。
ヨルコ、カインズの両氏はその点について問題は無さそうであったが、面談のようなこのやり取りは参加希望のプレイヤー全てに行われている。一般プレイヤーの善意による支援を回復アイテム支給などの元手にしているだけあり、参加者が真に攻略へ貢献する意識があるかどうか吟味することはおろそかにできないとの意向らしい。
「新規の参加者は最近では珍しいな」
「雑貨屋で装備素材探してるらしかったところで話し込んでな、偶然ここの話を出したら乗ってくれたんだ」
「いいんじゃないか?女性プレイヤーの参加なんて野郎共は喜ぶと思うぜ。つーかシュウさっきの挨拶、いつもよりやけに丁寧じゃなかったか?」
目をいやらしそうに細めてアルバが言うがシュウは気にしたふうもなく頬杖を下ろして配膳された小皿を引き寄せながら言葉を返す。
「初対面の淑女は丁重に扱え、なんて子供の頃から親父に仕込まれててな、他意はない。それ
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