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自然地理ドラゴン
三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第38話 ドラゴン 対 ドラゴン
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 シドウが、天に向かって咆哮したからである。
 それは黒い雲を割らんばかりに、太く、大きく……。だがティアには、それがとてもつらそうな叫びに聞こえた。

 それがやむと、シドウはアンデッドドラゴンに突進した。
 アンデッドドラゴンも反応する。シドウの動きに比べれば鈍いようにも見えたが、構えようという姿勢を見せた。

 ティアはそこで気づいた。そのアンデッドドラゴンは骨が不完全なようだった。ところどころ欠損しており、体もやや傾いていた。

 鋭く踏み込んだシドウが、腕を一閃。
 アンデッドドラゴンは対応しきれなかった。
 白骨の体が、粉砕された。

 一瞬のことのはずだったのに、骨が飛び散る様が、ティアにはとてもゆっくりに見えた。
 その後に浴びせられた激しい炎も。とてもゆっくりに見えた。
 アンデッドドラゴンが灰となり、やはりゆっくりと豪雨に流されていく。

「ひ、ヒエッ」

 衝撃的な光景に、男の片方が情けない声を漏らし、逃げ出していく。
 もう一人もそれに続いた。
 シドウは追わなかった。

「シドウ!」

 かけよるティア。
 シドウが、振り向いて答えた。

「あのアンデッドは生前の知識が残ってた……会話が……できたんだ……ドラゴン族の言葉で……」
「……」
「でも、俺が母さんの……ドラゴンの族長の娘の子だと伝えても……お前を殺すって……」

 ポツリポツリと話すシドウ。
 最新のアンデッド生成技術で、生前の知能知識を保持しつつ、情は排除され、指示には完全に従うような処置が施されていたのだ。

 ティアはドラゴン姿のシドウの頭を、縛られたままの両手で撫でた。
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