三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第38話 ドラゴン 対 ドラゴン
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、体の形。ティアにはすぐに連想した生き物があった。
そう。ドラゴンをアンデッドにしたら、こんな感じになるのではないか、と。
気づいたのはティアだけではなかったようだ。
「ど、ドラゴンの呪いだ……!」
そんな声が、へたりこんだ魔法使い集団から聞こえてきた。
「何よそれ!」
ティアがその声に対して大声で突っ込む。
「ここは昔、弱って地面に降りてきた一匹のドラゴンを、国中の冒険者が寄ってたかって倒した地なんだ。この塔はそれを記念して作られた。骨が保存されていたはずだ」
「そんなの初めて聞いたわよ!」
「ここらじゃ有名な話だ!」
怒鳴りに対し、怒鳴りで返ってきた。
ティア自身は初耳だった。
エリファスが敗れた際の保険だったのか、それとも、ドラゴンであればドラゴンに対抗できるかもしれない、そう考えたのか。
なんでこんな展開になってしまうのだろう――。
ティアとしてはそんな思いだった。
当然ではあるが、彼は自身の母親以外、純血のドラゴンに会ったことがない。そして彼の母親以外は昔に討伐済である以上、今後会うことも絶対にないはずだった。
それが、こんなかたちで。
アンデッドにされてしまった個体と対面することになってしまうとは。
そして日進月歩であろう、新魔王軍と称するグループのアンデッド生成技術。
このアンデッドドラゴンはどうなのだろう。
どの時点での技術で作られたアンデッドなのだろうか。
「まあいい。ここで始末すれば手柄も二倍だ。このドラゴンを殺れ」
男の片方の人差し指が、シドウに向いた。
嫌な予感だけをたずさえ、ティアはシドウを見守った。
その彼はドスンと、姿勢を低くしながら、前に一歩進む。
シドウが、何かをしゃべった。
人間の言葉ではなかった。旧魔王軍の公用語か、それとも公用語同様に母親から教わっていたというドラゴン族の言葉か。どちらも知らないティアには判別できない。
だが、男のほうに話しかけているのではないということはわかった。
すると、動き出そうとしていたアンデッドドラゴンが、とまった。
そして――。
「……!」
ティアは目を見張った。アンデッドドラゴンがしゃべったからである。
やはり、何語かはわからない。
シドウがそれに対してさらに返していく。またアンデッドドラゴンが返す。
やり取りは続く。
だが、シドウの声が徐々にか細くなっていったように聞こえた。
首の角度が、落ちていく。
ついにはシドウが沈黙し、風雨の音だけとなった。
「なんだ? 何をしゃべっている? 早く攻撃――!?」
アンデッドドラゴンを急かそうとした相手の男は、最後まで言えなかった。
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