三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第38話 ドラゴン 対 ドラゴン
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判断した。
今度は前に向かって叫ぶ。
「シドウ! 大丈夫なの?」
「平気」
シドウはそう言って、淡々と受け続けた。
レンガの飛散はすぐにやんだ。
「いきなり変身したからびっくりしたよ! 緊急事態だったんだね。わたし、てっきりシドウが怒っちゃったのかと勘違いしちゃった」
自意識過剰すぎた、という照れ笑い付きでシドウの背後まで来ると、ティアはそう声をかけた。
「……と思ったよ」
「え?」
それはシドウが前を向いたまま小さい声で言ったこともあり、よく聞こえなかった。
ティアが聞き返すと、今度は首を向けてきた。
「一瞬だけだけど、俺、この人たちはもう助けなくてもいいかもしれないって思ったよ」
その声は生暖かい風雨を凍らせてしまうような低さで、ティアは硬直してしまった。
だがそのトーンはすぐに直った。
「でも、この人たちを助けなかったら、それはそれでティアは悲しむのかなとも思った」
それを聞き、彼の吐露を、フッと力を抜くことで受け入れる。
「……そうだね。というかあんたのお母さんも悲しむんじゃない?」
「そうかも」
また彼がモヤモヤしている。そう思ったティアは、いつもの笑顔を彼に向けた。
「わたしのことは気にしなくていいよ。変な実験は無事に失敗して、あんたは百人の人間を助けました。死人は出しませんでした。今回はめでたく終了。それでいいじゃない」
「うん。まだ終わりじゃないと思うけど……ありがとう」
「え、終わりじゃない?」
「たぶん」
そこでまた大きな音……というよりも、声がした。
崩れた灯台の最上部からだ。
何かの吠えるような声だった。
ティアとしては生まれて一度も聞いたことがないようなものだった。
シドウが「下がっていて」と言い、前に首を戻し、灯台を見上げた。
ティアも気づいた。
灰色の何か巨大なものが、塔の壊れた部分から姿を見せていたのである。
その巨大なものは、そのまま下にゆっくり落ちるように、地面へと降りてきた。
「……!?」
それは、白骨だった。
大きな大きな、アンデッドモンスターだった。
前傾している体に、長い首、長い尾。翼のようにも見える、長い両腕。
その骨の体の上には、雨およびかぶっているフードでわかりづらいが、まだ青年のように見える男が二人乗っていた。おそらく人間ではなく、人型モンスター。
彼らは着陸後に降りると、横に立った。
「ここにドラゴンがいるということは……エリファス殿はやられたのか」
そのセリフは、ティアの右から左にすり抜けていった。
目も意識も、巨体アンデッドのほうに吸い付いていたからである。
その大きさと
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