三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第38話 ドラゴン 対 ドラゴン
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けでもない。さすがにやりすぎだと思った。
魔法使い軍団は、いったい何が起きているのかわかっていないようだった。
反射的に逃げ出せる者はおらず、声をあげられる者すらいない。百人の集団が、ただ固まっていた。
ティアがシドウに声をかけて真意を問おうとしたそのとき、一瞬空が光った。
直後に、空から激しい音。雷だ。
「あっ」
ティアの口から、驚く声。
雷に対してのものではない。雷鳴とほぼ同時に、シドウのその巨体が力強く跳ねたのである。空中で翼を広げながら、前方に。
ドラゴン姿のシドウが、軍団の後ろから一気に先頭へと着地した。
ドラゴンの重さで地面が揺れる。
そこでようやく目の前の現実を理解した魔法使い軍団。だが悲鳴は上がるものの、足が動く者はいない。皆、腰が抜けてへたりこんだ。
「ちょ、ちょっと! どういうこと?」
ティアは手に紐がついたまま先頭まで出て、後ろからシドウに叫んだ。
空が光り、さらに大きく雷が鳴った。もはや何の音なのかわからないような轟音が耳をつんざく。
さらにまた、まばゆいばかりの光。
雷……ではない。今度は、空が光っているわけではなかった。
(灯台――)
気づいたティアが灯台を見上げた、まさにそのとき。
レンガ造りの最上部が、強い光を溢れさせながら、一瞬膨張したように見えた。
そして、爆散――。
ほぼ同時に、雷の鋭い音とはまた違う鈍い破壊音が、広いこの地に鳴り響いた。
「――!?」
魔法使い軍団と同様、ティアも声が出せなくなった。
壊れた灯台上部。そこから細かい何かが、たくさんこちらに飛んできた。
レンガだ。
集団の先頭に出ていたシドウが、灯台を見上げながら翼を大きく広げる。
背中に乗ったときにティアは見ているが、ドラゴンの翼は完全に広げると、相当な面積がある。
ここにいる人間たちを、レンガから守れるほどには。
シドウの体全体に、爆発と風の勢いが乗ったレンガがぶつかっていく。
とても無事で済むようには思えない衝突音も聞こえた。
ティアはそこで我に返った。
彼が急いで変身した理由を理解し、腕を縛られたままの状態で立ち上がる。
魔法使い集団を抑えにかかった。
「みんな! このドラゴンは敵じゃないから! いまみんなを守ろうとしてくれてるから! 絶対に広がらないで! そのまま固まってて!」
ちょうどうまい具合に楕円形で固まっている魔法使い集団。このまま全員へたり込んでいたままが理想だ。
ティアの声に対し、返事はこない。が、散ろうとする動きもない。口をパクパク動かしている者がいるのは雨煙の中でもわかったが、声までは聞こえてこない。
大丈夫だろうとティアは
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