第二十八話「来禅高校修学旅行・[」
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「(十香!)」
五河士道は痛みで蹲りながら十香の戦いを見ていた。そして同時に自らの無力感に苛まれていた。来禅高校の屋上の一件以来考えている事、精霊やASTとの戦いでは自らは見ている事しか出来ない事を。
十香や四糸乃の様に精霊の力を持っている訳ではない。琴里の様に的確な指示が出せる訳ではない。自分はただ精霊の元に出向きラタトスクの指示通りにしているだけだった。
最初の内はそれでもいいと思っていた。その分自らの本心を伝えればいいと。それが変わったのは屋上の一件だ。
話は通じずただ暴力が支配する空間。自分の親しい者たちが手も足も出ずただ蹂躙されていく、そして自分はその場に居ながら何も出来ずただただそれが終わるのを遠くから見ていただけだった。
自分に突き付けられた銃口、それを跳ねのけてくれたのは妹の琴里だった。その時、自分は何も出来なかった。もう、あんな風に何も出来ずにいるのは嫌だった。
そして今、士道は同じ目に遭っている。あの時とは違い近くには十香しかおらず残りは全て敵であった。彼らの力の前に十香は呆気なく倒れ自分に向けて敵が手を伸ばしていた。
視界の端に地面に倒れ込む十香の姿が見える。地面に倒れながらも必死にこちらに向けて手を伸ばす姿が見えた。
「う、おおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
士道は自然と雄たけびを上げ手を振り上げた。彼の胸の内に秘める思いはただ一つ。
十香を、大切な人たちを守りたいっ!
そして、その願いは
「…っ!?」
「え…?」
「シド―?」
こちらに手を向けていた敵の切り裂かれ、上空へと飛んでいく右腕に誰もが驚愕する表情、そして。
士道の右腕に握られた光輝く剣という形で現れた。
「っ!」
大尉は思わずと言ったように後方に大きく飛びのいた。そして同時に少女の方を見る。先程まで少女が持っていた鏖殺公は存在しなかった。
少女が剣を投げた様子は無かった。なぜ彼が持っている?けして答えの出る事の無い疑問が大尉の胸を駆け巡る。しかし、直ぐにその疑問を飲み込み目の前の士道に目を向ける。
未だ士道は右手の剣に釘付けになっており隙をさらしていた。それを大尉は見逃さずしかし、警戒を強めて一気に駆けだす。
「シド―!」
「っ!」
少女の声に漸く士道が大尉の方を見る。しかし、その時には大尉の姿は士道の眼前まで来ていた。握り拳を作った大尉の左腕が士道の鳩尾に食い込む。何かがつぶれる音と共に士道の体は大きく吹き飛び後方にあった樹に背中を打ち付ける。右手に持っていた剣は手から離れ大尉の近くに落ちた。
「ぐっ!くそ…!」
士道は口から垂れた血
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