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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
死闘
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「倒したぞ!」
「あの大虎を! 人喰いの魔物を!」
「カートが!」
「Zクラスの生徒が!」
「災害級の魔物をたったひとりで!」
うおおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!
「カート!」「カート!」「カート!」
大歓声がカートの身に降り注ぐ。
だがカートは滝のような歓声に手を振るなどして応えようとはせず、地面に横たわった魔物の巨体を じっと見つめていた。
(残心を怠るな……。こいつからはまだ生気が感じられる!)
カートの予測通り魔物は生きていた。
怒りと苦痛に満ちた唸り声を喉の奥から響かせて巨体を起こす。
歓声はかき消え、その鬼気迫る姿に恐怖した。
「あ、頭をやられてまだ生きているのかよ!?」
眉間に刺さった剣は頭骨をえぐり、脳を貫いた。人ならば、いや、いかなる生き物であっても脳がここまで損傷しては生きてはいないだろう。だがこの魔物は絶命することなく起き上がった。
自然の法則を外れた生命力。これが魔物だ。
それだけではない。
「あ! 魔物の姿が……」
「消えた!?」
ムスタール森林で法眼が捕獲する際にも見せた擬態迷彩(カメレオン・カモフラージュ)によって姿をくらませたのだ。
「い、いったいどこにいるんだ!?」
「そこだ!」
「こっちだ!」
「いや、そっち!」
初めて目にする魔物の特殊能力に、まるで自身が魔物と対峙しているかのように興奮と困惑をおぼえ、周章狼狽する観客たち。
それとは対照的にカートはいたって冷静だった。
擬態迷彩の力は法眼から聞いている。その隠蔽能力は木々の生い茂る広大な密林で最大の効果を発揮する。闘技場のような遮蔽物のない閉ざされた場所では完全に隠れることも逃げることも不可能だ。
とはいえ周囲の景色に同化することで目視が困難になることは確かだ。ぼやけた輪郭しか見えないのでは、相手の正確な動きがわからない。牙で噛みつこうとしているのか、それとも爪で引き裂くつもりなのか、または尾で打ちかかってくるのか、あるいは体当たりをしてくるのか、その予測がつかない。
「瀑布よ、大河よ、荒れ狂え!」
カートの唱えた呪文によって闘技場の中央に激しい水飛沫が生じる。対称を押し流す激流の魔法は姿をくらませた魔物ではなく地面を穿ち、茶色く濁った泥水を周囲に撒き散らした。
泥の豪雨がカートを茶褐色に染める。
茶褐色に染まったのはカートだけではない。おなじ闘技場にいる魔物もだ。
四肢を持った獣の形をした泥塊が現れる。
泥水で着色することで擬態迷彩を無力化させたのだ。
魔物は最後の力を振り絞ってカートに向かって突進。人と獣の姿が交差すると、なにかが中空に弧を描いて地面に落ちる。
泥にまみれた虎の首だ。
尋常ではない生
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