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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
死闘
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腿】
複数の絶技を組み合わせ、カートは戦いの中で自分なりの【円空圈】を見い出した。
「すごい! すごいぞ!」
「なんて体術だ」
「道化なんかじゃない」
「最初に言っていたよな、俺達を奮起させるために魔物と戦うって」
「がんばれ!」
「たったひとりで、魔物と戦えるまで修行して」
「がんばれ!」
「負けるな!」
「がんばれ!」
「がんばれ!」
「がんばれ!」
カートの闘志が大衆を動かした。
魔物という強大な相手に追い詰められ、なおかつ果敢に戦うその姿に、Sクラスに圧倒されつつもいまだ克己心を忘れないみずからの姿が重なったからだ。
「人の叫びが気になるのか、密林の王よ。だが目の前の相手以外に苛立っていては勝機を失うぞ」
GUGAAAッ!
その言葉に反応し、ふたたび前肢を伸ばしてくるが、カートはそれに剣を走らせ逆に手傷を負わせる。
(深くは斬り込まず、刃を当てるだけでいい。わすがな傷を負わせて苛立たせ、焦らせ、怒らす。魔物の感情を俺が制御するんだ! そうすればこいつは必ず身を乗り出しての攻撃を仕掛けてくる)
SYAAAAAッ!
魔物が勢いよく前肢を振るい、鉤爪が走る。
カートの硬革鎧が切り裂かれ、さらに魔物が飛びつく。――が、カートは後ろに跳んで壁の三角隅に足をかけて張りついた。
「あ、あの傷で動けるのか!?」
「いや、最初から傷なんかない。魔物の爪を受ける瞬間にわずかに後方に動いて見切ったんだ!」
「避けたのは鎧だけ、まさに紙一重!」
「だが壁に張りついていては逃げ場がないぞ、魔物の体格と俊敏さなら壁の上まで追いかけてくる!」
SYUッ!
事実、魔物はカート向かって跳躍した。カートはそこに盾を投げつけ、意識がそれた隙を狙い、素早く上へと移動した。
「か、壁の上に立っている!?」
「なんであの体勢で落ちないんだ?」
「いったいどんな魔法を!?」
否。
魔法ではない。カートは法眼より教えられた壁虎功をもちいて壁の上を二本の足で移動したのだ。
(目前の動く物に飛びつく、魔物とはいえ獣の習性からは逃れられないようだな。盾を構えた時も俺自身ではなく盾に攻撃してきた。俺が鎧を裂かれて紙一重で避けたのは傷を受けたと思わせ、獣の習性を利用してあえてこちらに跳び込ませるため。狙い通り壁の隅に跳び込ませて自由に動けない狭い場所に誘い込んだうえ、壁に沿って身体を伸ばした。背伸びをして骨が伸びきったこの瞬間が勝機!)
獣の俊敏さも鋭い牙も爪も封じた、その隙を見逃すカートではなかった。
壁から飛び上がり縦に構えた剣が魔物の眉間に深々と突き刺さり、後頭部から剣尖がのぞく。
魔物は大きくのけぞると大地に倒れた。
「……た、倒した」
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