84部分:優しい魂よその十九
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
優しい魂よその十九
「それじゃあな。家に帰ったら早速作詞と作曲するからな」
「楽しみにしておくわ」
「一週間、いや五日か?」
考える顔になって自分で述べる。
「時間は」
「五日でできるの?」
「ああ。書くのは早いんだよ」
こう未晴に答える。
「これでもな」
「けれど一曲を五日でなの」
「曲のイメージもすぐに湧くんだよ」
自分でこう言うのだった。
「本当にすぐにな」
「それって凄いことじゃないの?」
未晴は正道の言葉を聞いてそう思わざるを得なかった。
「すぐにって」
「こういうのってな。やっぱり感性なんだよ」
「よく言われることね」
「ああ。それで人それぞれだよな」
これは何に対してもよく言われることであった。
「どうしてもな」
「じゃあ音橋君はそれが早い人なのね」
「学校の勉強は苦手でもこういうのは得意なんだよ」
これは半分以上冗談の言葉である。
「音楽はな」
「けれど成績だってそんなに」
「そうか?」
「そんなに悪くないじゃない」
クラスで真ん中だ。確かに悪いというまではいかない。なおクラスで最下位といえばやはり野本である。彼に関しては皆があれだと言う。
「それでそう言っても」
「まあいいじゃねえか。とにかく五日な」
「五日ね」
「そうさ、五日さ」
お互い笑みになっていた。
「帰って五日後な。待っててくれよ」
「わかったわ」
その笑みのまま答える未晴だった。
「それじゃあ」
「その時な。とりあえず今はな」
「どうするの?」
「これ以上ここにいても何にもならないしな」
次に言ったこはこういうことだった。
「帰るか。あんたもここに長くいない方がいいぜ」
「寒いから?」
「それもあるけれどな。ただもっとな」
「!?ああ、そういうことね」
未晴もここで正道が何を言いたいのかわかった。納得した顔になって彼の言葉に頷くのだった。
「誤解になって噂になるわよね」
「それでもいいっていうんならいいけれどな。俺はまあ別に」
「スキャンダルは怖くないの」
「スキャンダルが勲章なんだよ」
うそぶいてみせた。この辺りは自分に少しだけ嘘をついている正道だった。
「ロッカーにとっちゃな。そういうもんだろ?」
「あら、バラードじゃなかったかしら」
未晴は意地悪い笑みを浮かべて正道に返した。
「音橋君が歌うのは」
「勿論それだけじゃないけれどな。何でもかんでも歌うんだけれどな」
「じゃあロッカーじゃないじゃない」
「生き方がロッカーなんだよ」
かなり強引に力説する。
「俺はな」
「じゃあそういうことにしておくわ。まあ今はね」
「帰るのか」
「私はロッカーじゃないから」
笑って正道から二歩離れた。だがここでまた言うのだった。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ