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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
1st bullet 《hello & good-bye》
chapter 01 : conversation
#01 "Welcome to Roanapur"
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Side ???

「………」

その時、俺は甲板に立って海を眺めていた。とっくに見飽きた筈のこの海を。
ロアナプラ()は既に遠く離れており、その影も見えない。
耳に届くのは(ラグーン号)のエンジン音と切り裂かれた海面が掻き立てる波の音。

何時からこうしていたかは覚えちゃいない。
もしかしたら前の人生でもそうしていたのかもしれない。 あまりハッキリとした事はもうよく分からなくなってはいるんだが……

ロアナプラを出て世界中を巡った。
そして世界の何処にいても俺は海を眺める。 そうやって俺は生きてきた。
そうしてりゃ心が落ち着くからか? 我ながら軟弱な話だ。 "彼女"に聞かれればなんと……

「いいからとっとと喋れってんだよ! この糞日本人(ジャップ)が!」

怒声と共に人が甲板に強く打ち付けられる音が此方まで聞こえてくる。
さて、どうやら始まったか。
折角の二人の初対面だ。顔を出すのも野暮というものだろう。
まあ、終わった頃に顔を出すとしようか……




Side レヴィ

「ダッチ、面倒くせえよ。 膝の辺りを撃っちまっていいか。 そうすりゃベラベラ喋り出すぜ」

「ひっ!」

糞ジャップ野郎は甲板に座り込んだまま脅えて後退りする。 けっ、イライラするぜ。 情けねぇ面しやがって…

アタシは銃を突き付けたまま暑苦しいスーツ姿の日本人(ホワイトカラー)野郎の(つら)を睨み付ける。

……鼻血垂らしながらアタシらを見上げてくるその目がムカつくぜ。
ただビビってるだけじゃねえ。 なんで自分がこんな目に合わなきゃいけねえんだ。 自分は何もしちゃいねえのに。
そんな甘ったれた考えが浮かんでんのが丸わかりだぜ。

くそっ! ダッチが止めなきゃ、愛銃(カトラス)の鉛玉ブチこんでやれたのによ……

このままはい、サヨナラってんじゃつまんねえな。
拐って身代金でも要求してやろうか。 そんくらいしてやんなきゃ腹の虫が収まんねえぜ。

「レヴィ。クールに頼むぜ。 仕事はスマートにやんなきゃな」

日本人に話を聞いてたダッチが振り返ってアタシを宥めてくる。
アタシの顔色読みやがったな。
チッ。ガキ扱いすんじゃねえよ。

「そんじゃあ改めて聞くが……」

ダッチはもうアタシには構おうとせず、膝を突いて日本人に語りかけ直す。
うちのボスは見かけほど荒っぽくねえからな。 やっぱこのまま解放してやるつもりなんだろうけど………

「……それじゃ面白くねえよなあ」

アタシはこの優男を逃がさねえ事に決めた。 ダッチは反対するだろうけど、んなもん知った事か。 やりたいようにやらせてもらうぜ。
そうでなきゃ二挺拳銃(トゥーハンド)の名が泣くってもんだ。

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