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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いの吐露と現実と
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笑みを手で隠しながら、細まった視界越しに文を見る。紺碧の瞳と視線が合って、彼女の眦も自分と同じように下がっていた。お互いにアリアの姿を想像しているのだろう。
ひとしきり笑い終えてから、文は「2人とも、だいぶん仲が良さそうで安心したのだ。このまま是非とも、武偵活動のパートナーとして頑張ってもらいたいところなのだ!」と告げてくれる。
「それと、密かに如月くんのアプローチにも期待してるのだ!」真鍮製のブラシを自分に向けて突き付けながら、無邪気と悪戯心の綯い交ぜになった笑みで目前の少女は鷹揚に宣言した。
「あややは恋愛とかはしたことないけど、他の人の恋バナとかを聞いたり進展を見たりするのは大好きなのだ。自分も感情移入して、同じような気分になれるから……。あはは……」
どうやら文がこの話に乗り気だったのは、こうした性格が影響していたのかもしれない。そうして気恥ずかしさを隠すためだろうか、苦笑しながら作業の手を着々と進めていった。
同時に彼女の性格──無邪気で奔放で磊落な様を想起させられて、思わず訊いてみたいような感覚に苛まれた。前々から気になっていたことをようやく訊けることに、内心で満足しながら。
「……ところで、文って落ち込むことはあるの? いつも可愛らしく笑っているところだけを見てて、それ以外の表情は見たことがないもの。笑顔でいるのも別段、悪いことじゃないけどね」
彼女はそうした自分の問いを聞いて、一考するように「うーん……」と唸った。愛嬌のある大きな瞳を何度か瞬かせながら、おもむろに作業の手を止めていく。それから呟くように零した。
「落ち込むことは、まぁ、ある……のだ。さっき、あややは色恋沙汰の経験は無いって言ったけど、それでも何もしてないわけじゃないのだ。これは恋愛じゃなくて片想いの話になっちゃうけど、あややの気になってる人とかが依頼に行ったりすると、しばらく会えないって落ち込むし……でも帰ってきて、あややに武器の整備を頼んでくれた時とかは、すっごく嬉しいのだ!」
文の咲き誇った花のような笑顔に、雲間から陽光が射す様を幻視した。一喜一憂する年頃の女子高生らしい恋愛事情の告白を聞いて、一抹の慰安と安堵とが胸の内を覆っていく。いくら純真無邪気を極めた彼女でも落ち込むことはあるのだと知って、人間の心理作用というものを悟った。
「君の片想いが、どうか成就しますように──。ふふっ、応援してるよ。頑張ってね」胸の高さに小さく手を握りながら、その握った手に声援を込める。文はそれに大きく頷いてくれた。
そうして話の区切りがついた丁度の具合に、例の集積の山々を隔てた向こうから、扉の開閉音と不規則な足音が聞こえてくる。やはり散乱している部品等を踏まないように、慎重に歩いているのだろう。彼女の軽快な足
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