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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いの吐露と現実と
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れがただ煩わしくて、目前の彼女から見た自分の姿は、動揺にあてられて緘黙しているのだろうとさえ思った。

忍ぶれど色にでりけり我が恋は物や思ふと人の問ふまで──。

つい近頃に自覚した神崎・H・アリアという眇たる一少女への恋情は、他言もせず自分の胸臆だけに秘めていたはずなのに、こうして久々に会った他人に見澄まされてしまうほどには、どうやら自分のこの恋情というものは、何かしらの色を帯びて滔々と横溢してしまっているらしい。


「……アリアに対して、恋情を抱いているのは事実だよ。彼女の優しさとか、そういう面に惹かれてしまっているのも、ね。けれど『好き』という言葉が、あの子を親友として好きなのか、パートナーとして好きなのか、異性として好きなのか──その区別が、あまりよく分からない。さっきも言ったけど、この感情の根幹はアリアを護りたいというだけ。それが文の中で『好き』という言葉に置き換えられるのなら、たぶん、そうなんじゃないかな。この感情も、きっとね」


言い切るだけ言い切ってから、自分の顔がはにかんでいるのを自覚した。ここに彼女が居なくて良かったと、そんなことを思ってしまうくらいには、どうやら今の自分は参っているらしい。
アリアの前でこんな表情を見せたら、あの子は物珍しがって茶化すだろうか。それとも内容にあてられて、逆に羞恥に気圧されてしまうだろうか。そんな考えが、ふと脳裏を過ぎていった。

作業をしている文の手元を見ると、銃はいつの間にか完全分解がされている。その部品を紛失しないように静止させながら、1つずつ目視での点検を始めていった。致命傷の有無とかを確認しているのだろう。それを済ませたら銃器用潤滑油に湿らせた布で、洗浄と手入れを兼ねている。


「神崎さんが如月くんのことをどう思ってるかは分からないけど、あややの見る限り、悪く思われてはいないのだ。校内で一緒に居る姿もよく見かけるけど、いつも仲が良さそうにしてるし……少なくとも、お互いにパートナー程度の関係っていう風に感じるのだ。同棲してるって言ってたけど、お家での神崎さんってどんな感じなのだ? 個人的にちょっと気になるのだ」


楽しそうに笑いながら、彼女はそう告げた。この話題に意識を傾注させているようで、少なくとも関心は持ってくれているらしい。その事実を表層から感受して、誰にともなく安堵した。


「家でのアリア……と言っても、そんなに変わらないかな。学校よりも家に居る方が気楽なのはあるでしょうけど、女の子らしいと言えば女の子らしいかも。『この服、可愛いなぁ……』って呟きながらファッション雑誌を読んでたり、あとは動物系のテレビ番組が好きだね。自分も一緒に見るんだけど、本当に動物が好きなのか、ちょっとテンションが上がってる。ふふっ」


口元から零れた
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