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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
想いの吐露と現実と
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の代名詞とも呼べるものなのだ。
──彼女自身に納得がいくパートナーを上手く見付けられずに、焦燥していたのだろう。迫る不可視の刻限を何処かで感受しながら、この現実を見て焦燥に焦燥を重ねていたのだろうと思う。

けれど、そこに如月彩斗という武偵が現れた──彼女に納得のいくパートナーこそが──ために、アリアは些か強情な手段でもって自分にその話を持ち掛けたのだ。そうして自分はそれを快諾して、そこから彼女とともに生活をするようになった。その後の彼女しか、自分は知らなかったのだ。気位に満ち満ちていて、他人には少し当たりが強くて、可愛らしく愛嬌のある、ときおり見せてくれる優しさに惹かれてしまうほど──そんな彼女だけしか、知らなかったのだ。


「だから、少し前と今の神崎さんを見比べて驚いている人も居たのだ。如月くんの穏和な性格が移ったのかなっていうお話もされたり、パートナーでお似合いだっていう声もやっぱり多いのだ。それに何より、如月くんの能力が神崎さんと同じくらいのレベルだから、お互いに息が合ってるみたい。みんな、神崎さんの本当の強さが分かったんじゃないのかなって思うのだ」


「それに、結局は」と文は続ける。


「神崎さんのことをいちばん分かってあげられているのは、やっぱりパートナーの如月くんだと思う。まだ良くも悪くも彼女の噂はあるけど……何より、同棲していちばん近くに居る如月くんから愚痴の1つも出てこないことが、凄いなぁって思うのだ。それって神崎さんの性格とか、そういったことを分かってあげられているからでしょ? むしろ、護ってあげたいとか──」


文はそこまで言ってから、やにわに作業の手を止めてしまった。そうして生起した森閑という名の空白の中に、彼女はほんの数秒の息継ぎを込める。()っと見据えられた紺碧の瞳を前にして、その紺碧は何ともなしに爛々としているように見えた。玲瓏な瞳は自分の胸臆を見澄ましているように思えてしまって、どうにも仕様がない。そんなことばかりをこの刹那に一考した。


「如月くんは、神崎さんのこと……好き、なのだ?」


気恥ずかしそうに零した無邪気な笑みの裡面に、彼女はいつにも増して真剣な面持ちを秘めていた。同時に1度は泰然を取り戻したはずの脈博が120以上を打ち始めて、心臓のあたりが何とも形容のできない、息苦しいだけの締め付けられるような閉塞感に襲われてしまっている。そうして文字通り、文から投げかけられた問いの意想外なことに、肩が跳ねたのを感じていた。

肺胞に染み渡るまでに息を吸い吸い、長い溜息を吐きながら、どうにも落ち着かないこの感情を何とか落ち着かせようと躍起になりつつ、組んでいた手元の指先を遊ばせている。
何でもいいから言葉を返したいのに、口元からは吐息が洩れるだけだった。そ
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